俗に言う『水虫』とは、足白癬と呼ばれる皮膚真菌症のひとつで、白癬菌が表皮角質のケラチン組織に寄生し色々な症状を起こすものです。
足白癬には(1)趾間型、(2)水疱型、(3)角質型と3つのタイプがあります。 一般的に思い浮かぶ、白っぽくふやけジュクジュクした『水虫』は趾間型で、若い人によくみられるタイプです。また、小さな水疱が集簇する水疱型もよくみられます。
趾間型と水疱型は、根気よく抗真菌剤を外用する事により治癒しますが、外用には確実な診断が不可欠です。白癬以外に抗真菌剤を誤って外用し症状悪化させている症例も少なくありません。
次に角質型について簡単に解説させて頂く訳ですが、実はこのタイプが最近問題になっています。 角質型は、高齢者に多くみられるタイプで、一般的な『水虫』のイメージとは異なる足底の角化型病変で、痒みなどの自覚症状もありません。
何故、このタイプが問題なのでしょうか? 本人や介護者が加齢変化と錯覚してしまい放置され易い事、外用抗真菌剤の効果が低い事、そして、皮膚角質層内の有菌数が多く、感染拡大の原因になる事が挙げられます。 つまり、治療される機会が少なく、しかし、感染を拡大させ易いタイプと言えます。
このタイプは、外用抗真菌剤の単純塗布だけでは、効果がほとんどありません。 毎日の入浴で足をよく洗い足底の角質を除去する事で、外用効果は高められますが、介護を要する高齢者の場合、毎日の入浴が困難な状況もあります。 この場合は、20〜30分の温水足浴が有効です。足浴の際に、足の裏をよく洗い、湿気の残るうちに抗真菌剤を外用して下さい。
また、基剤に油脂分の多い抗真菌剤の使用や、角質融解効果のあるサルチル酸ワセリンとの重層塗布、尿素軟膏との併用も効果が高まります。 しかし、このような外用方法でも治療効果は不十分な事も多く、確実な治療効果を求める場合には、平行して抗真菌剤の内服が必要です。薬剤により異なりますが、3〜6ヶ月以上の長期内服が必要となります。
しかし、以前に比べ副作用は少なくなったものの、肝機能や腎機能の低下した高齢者への長期投与には、賛成できません。全身状態の低下している高齢者の角質型白癬と爪白癬に対しては、合併症のない限り積極的治療の適応はないと考えています。 この点は私見ではありますが、施設医師や主治医の先生方にもご理解頂けると思います。
感染予防について、施設を例に紹介します。ポイントは入浴と履物の2点です。 入浴時には、浴場・脱衣場ともに、よく流しよく拭く事です。これによって白癬菌の菌数を減らす事を心掛けましょう。 そして、足拭きマットの共同使用を中止し、各々の体を拭いたタオルで最後に足を拭くようにしましょう。また、スリッパや靴など履物を共有しないように心掛けてください。
医学的視点からの予防策は、角化型白癬に対しては、週1回の抗真菌剤、毎日のサルチル酸ワセリンの外用が有効です。環境中に撒き散らされる白癬菌量を減らす事を心掛けましょう。但し足裏への外用による転倒事故には十分注意して下さい。夜間就寝時の塗布が良いでしょう。 簡単ではありますが、予防策として『現実に今すぐに出来る事』を紹介させて頂きました。これらは施設を想定したものですが、施設以外の環境下でも役立つと考えています。
足底に白癬菌が付着しても、発症する事は少ないのです。自己への感染に対して必要以上に神経質になる必要はありません。 最近の調査では、一般成人の半数余りが保菌しているとの報告もあります。 すなわち、あなた自身が元々『水虫』を持っている可能性も十分ありますので・・・。
(本文は高齢者けあ2002(財団法人 日本総合研究所 教育事業本部日総研出版)に執筆した特集記事より一部引用されています。)
北里大学医学部卒業
さいとう皮膚科クリニック開業
高齢者皮膚管理研究会 発足
社団法人 習志野市医師会
