HOME > 感染予防教室 > あの先生この先生の専門家コラム > 第4回: 『今、MRSAは』

感染予防教室

●あの先生この先生の専門家コラム

第4回: 『今、MRSAは』
更生病院 臨床検査科 臨床検査技師 技師長補佐 犬塚和久

MRSAはもともとがヒトの常在菌である黄色ブドウ球菌です。語源はメチシリン・レジスタント・スタヒロコッカス・アウレウスの略語で、メチシリン(抗生物質の名称)抗菌薬耐性遺伝子を獲得したもので、ある意味では誰が保菌していても不思議ではなく、健康なヒトの30%程度が保菌しているとの報告もあります。即ち、すでに街中を歩いているだけでもMRSAに曝露される可能性が日常的にいくらでもあるといえる状況にあります。しかし、MRSAは通常の健康状態にあるヒトに対しては、伝染病の病原体のような強い感染力と病原性は有しておらず、MRSAを保菌しても身体に備わった免疫力で数週間から数ヵ月で自然と除菌されてしまうとされています。普通に健康であるならば、例えMRSAを保菌しても何ら問題はないとされています。


また、常在菌化してきている証としては、外来患者由来の検体から出てくるMRSAは10株に1〜2株は薬剤耐性が戻って普通の黄色ブドウ球菌とまったく同じ性質になっているものが増え、色々な抗菌薬に対しても感受性を示す姿になっています。(更生病院気道材料検出株368株中41株の割合で検出されています。)

バイキン残り

MRSA感染を注意しなければいけない患者さんは、通常大学病院など大規模な病院に多発する傾向にあります。特に、抗がん剤や放射線治療を受けていて免疫力が極度に低下している患者さん、長期間に渡る抗生剤治療を受けている患者さん、身体状態が極度に悪い状態にある方(老衰や極度の栄養失調状態など)、大きな外科手術を受けた直後の患者さんなどです。このような患者さんは、ハイリスクの方として接しなければいけません。MRSAの感染経路は汚染された器物・手指を介した接触感染で成立されます。つまり、汚染された器具・手指は私たちの肉眼では見えない為に、汚染が広がっていくのです。日常肉眼で、右図のように顕微鏡で観察した像が見え、培地を使用して汚染集落と同等のものが確認できたとすれば、きっと誰もが手洗いを十分に行い、器具もきれいに保つでしょう。

MRSAは伝染病の病原菌ではありませんので、健康状態にあるヒトでは例え感染を受けても発症することは極めて稀であるとされています。記憶に新しい「らい予防法」の非科学的・非人間的な内容が指摘され、同法は社会的に葬り去られましたが、同法の背景にあった偏見と差別の構図が、現在のMRSA問題の背景にも共通しているようで気がかりになります。

全ての医療行為の基本は正しい手洗いを忘れずに、手洗いを適切に行うことでMRSAを代表とした各種の院内感染は減少させることができます。

手洗い
■先生のプロフィール
愛知県厚生農業協同組合連合会 更生病院 臨床検査科 臨床検査技師 技師長補佐 犬塚和久
1984年
愛知県臨床衛生検査技師会微生物検査研究班班長
1992年
日本臨床衛生検査技師会全国研究班微生物全国委員
1994年
日本臨床衛生検査技師会検査技師会精度管理委員
1998年

平成11年度厚生研究事業

薬剤耐性菌に関する研究協力委員

1999年

科学技術庁研究

院内環境感染の原因菌・常在菌に関する研究協力委員

所属学会

・日本臨床微生物学会 幹事

・日本環境感染学会 評議委員

・日本臨床衛生検査技師会

・日本化学療法学会

・日本感染症学会

・臨床微生物迅速診断研究会

犬塚和久