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感染予防教室

●あの先生この先生の専門家コラム

第2回: 『在宅医療における感染症と予防策のポイント』
横浜市立大学医学部附属病院臨床検査部 満田 年宏

在宅医療における感染予防上重要な点は、1にも、2にも、3にも、まず「社会人らしい清潔さを保つこと」です。在宅で寝たきりの患者さんは、乳児にたとえることができます。「べべを着た大きな赤ちゃん」は、自ら着替えはできませんし、気が付くと夏はべとべと冬はかさかかで、お風呂も入れてあげないといけないし、歯も自らは磨いてくれません。気が付くと全身が「でろでろ」状態、なんてことがないでしょうか?愛情をもって日清潔さを保ってあげることで、我が家の大きな赤ちゃんは如何に愛おしい存在で居続けていてくれることでしょうか!加えて、意識のしっかりしている介護の必要な女性であれば、時にはお化粧をしてさしあげたりして・・・。ちょっとした介護上の気遣い、より華やいだ残りの人生を継続してもらうことができるのです。家族をいつまでも家族として慈しみ、介護に関わる医療従事者も患者さんを患者として扱うのではなく、生ある限り一人格のある社会人としてあるべき姿に近づけることが、ひいては感染予防にもつながるのです。


在宅介護における3大感染症は、誤嚥性肺炎、褥瘡、尿路感染症(膀胱炎や腎盂腎炎)です。いずれも感染予防の最大の基本である衛生管理の破綻が発症の引き金になることが多いのです。意識レベルが下がると咳嗽中枢が十分機能しなくなり、必要なときに「咳」をすることができないことが知られています。この状態で口腔内ケアーをおろそかにしていると、口腔内常在菌を大量に気管内に誤嚥し、肺炎が引き起こされます。まさに自らの菌で自らが自爆してしまうのです。なんと悲しい出来事でしょう・・・。忘れがちですが、口腔内に装着する義歯の衛生管理も重要です。最近の研究でアンギオテンシン転換酵素阻害剤と呼ばれる降圧剤の副作用の「空咳」が咳嗽中枢を刺激し、高齢者の誤嚥性肺炎を減少させることが判明しています。高血圧を合併症として持っていて意識障害のある患者さんには、最良の組み合わせの治療法 となります。


褥瘡は寝たきりの患者さんに常につきまとう大きな課題です。皮膚の衛生管理、循環改善、除圧、体位変換など、ケアーに休みはありません。全身の皮膚の色をくまなく点検するとともに、患者さんのリスクをブレーデンスケールと呼ばれている手法で点数評価し、褥瘡発生のリスクに応じて介護用品の力もかりて除圧や循環障害改善を行い早めに対応することが大事に至らないこつです(日本語版もあります)。感染 を起こしてからではかなり大変です。


3つめの尿路感染症は尿道カテーテル施行中の患者には必発と言われています。予防と治療という両極端の考え方より、泌尿器科の先生方は共生(ともに生きる)してゆくことが大切との発想が管理上大切と強調しておられます。すなわち患者さんの尿を培養すると菌は検出されるかもしれないが、発熱や膀胱炎、腎障害がなければ、治療の必要はないとの視点です。従来は頻回に行っていた儀式のような抗生物質による予防的膀胱洗浄は、かえって耐性菌を生む温床となるため、慎むようになりました。予防策で大事な点はなんといっても尿路の停滞(チューブが曲がって尿が流れなくなる)を避けることです。高齢化社会を迎え、自らの身体に障害が生じ何らかの不自由があっても、気持ちよく新しい朝を迎えてもらえる、そんな明日のために正しい知識 をもって感染症予防に務めましょう。

■先生のプロフィール
満田 年宏(みつだ としひろ)
■専門分野:

感染制御学、臨床検査医学、臨床微生物学

■各種活動:

日本感染症学会関係各種役職(評議員, 学会誌編集委員, 専門医試験出題 委員, 専門医試験ワーキング委員, 名簿委員, ホームページ担当委員)、日本臨床微 生物学会関係各種役職(評議員,ホームページ委員) 日本環境感染学会評議員、日本 臨床検査医会関係各種役職(会報編集主幹、遺伝子検査ワーキング委員)、厚生省院 内感染対策他

■資格:

医学博士、日本小児科学会認定医、日本リウマチ学会認定医、日本医師会認定 産業医、日本感染症学会認定医、ICD制度協議会認定ICD、日本アレルギー学会認定医

満田 年宏