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感染予防教室

●知って得するさまざまな感染症

セラチア菌

■セラチア菌とは? ■セラチア菌による院内感染の伝播経路
■感染予防対策 ■まとめ

(1)セラチア菌とは?

セラチアはSerratia属に属するグラム陰性桿菌(※1)で、Serratia marcescensをはじめとする数種類の菌種があります。ちなみにSerratiaとは、イタリアの物理学者Serrafino Serratiの名前に由来し、marcescensは、ラテン語で腐敗を意味する"marco"に由来します。

セラチア

セラチアは水や土壌に広く分布し、病院だけではなく、一般の家庭でも洗面台などの湿潤環境に存在します。S.marcescensは赤色からピンクの色素を産生することが多く、洗面台などにバイオフィルム(※2)を形成しているのが見えることがあります。


一般の健常人に対してはこの菌は平素無害菌であるので、家庭などでは特に注意するべきことはありません。ただし、易感染患者(抵抗力が低下し感染しやすい状態の患者)や患者の感染しやすい部位にセラチアが伝播した場合、呼吸器感染、尿路感染、手術部位感染、血流感染、髄膜炎などを起こし、血流感染などの場合には急速に増殖し、時に死因となることもあります。


(※1)桿菌…棒状、あるいは円筒状をした細菌のこと。

(※2)バイオフィルム…複数の細菌が共存して複合体を形成し、固体の表面に付着した状態のものの総称。

(2)セラチア菌による院内感染の伝播経路

セラチア菌による院内感染の伝播経路は、ほとんどが接触感染です。伝播を介するものとしては次の5つが考えられます。

【1】手指を経由した伝播

セラチア菌は病院・施設内の湿潤環境に広く分布しており、また症状のない尿路保菌者などにも存在するので、医療従事者の手指を頻繁に汚染すると思われます。そのため医療従事者が患者にカテーテルの挿入などの処置を行う前には、必ず手洗いを行い、手袋を着用することが大切です。また易感染患者に接触する前などにも、手洗いは大変重要です。

【2】薬剤を経由した伝播

点滴
セラチア菌は栄養源の乏しい水の中でも増殖します。したがって不適切に操作された輸液や輸液ルートにはセラチア菌が生息することがあり、これらが直接血管内に混入した場合、血流感染を発生させる危険性が非常に高くなります。注射薬は原則単回使用とし、やむなく多数回使用する場合には厳重な衛生操作を行う必要があります。消毒薬においても、塩化ベンザルコニウムなどの低レベルの消毒薬の中にはセラチア菌が生存することがあり、それらの消毒薬で処置された手術部位やカテーテル挿入部位などから、手術部位感染や血流感染が発生する可能性があります。粘膜に使用する薬剤が汚染されている場合も、呼吸器感染、尿路感染などをひきおこす可能性があります。

【3】医療関連器具を経由した伝播

手術室で用いる血圧監視装置や、分娩室で用いる体内記録計用の装置を介したと思われる感染例も報告されています。 クリティカル・セミクリティカル器具に付着したセラチア菌は、標準的な滅菌・高水準消毒を実施していれば殺滅することが出来ます。ただし、ネブライザーなど呼吸器系装置の加湿水(滅菌精製水)においては、蛇管・配管・加湿水タンクなどの滅菌・消毒や加湿水の交換が頻繁に行われていない場合にセラチア菌が増殖することがあり、呼吸器感染などの原因となります。

医療関連器具を経由した伝播

【4】物品を経由した伝播

給食食器は通常どおり熱水洗浄し、リネンも通常どおり洗濯を行い乾燥させておけば問題はありません。臓器移植患者など、極めて易感染状態にある患者の使用する洗面用具は、定期的に消毒することをおすすめします。

【5】環境を経由した伝播

洗面台

床などの乾燥環境を経由したセラチア菌の伝播はあまり問題とはなりませんが、洗面台などの湿潤環境においては、そこに生息するセラチア菌が病院・施設内感染の感染源となる可能性があります。そのため、日常的な清掃で湿潤環境の清潔を保つことが重要です。

ただし、セラチア菌は環境常在菌であり、これらをすべて常に消毒しておくことは不可能ですので、手洗いの励行が必須となります。傷口やカテーテル挿入のある方などの入浴時には、消毒薬を用いて浴槽の清掃を行うこともあります。