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感染予防教室

●知って得するさまざまな感染症

SARS

(1)SARSとは?

sars

平成15年3月に、東南アジアを中心にアウトブレイクしたSARS(重症急性呼吸器症候群)は、強い感染力と高い死亡率(特に高齢者)により、世界中を震撼させました。2003年7月5日、WHO(世界保健機関)によって終息宣言が出された後は、現在まで、WHOが指定する流行地域はありませんが、シンガポールや台湾での研究者の過失によると思われる感染報告や中国での散発的な患者発生報告、ハクビシンなどの動物からSARSウイルスの検出など、依然として予断を許さない状態が続いています。幸運にも心配された今冬の流行は回避できたようですが、ウイルスに有効なワクチンは未報告であり、いつ牙をむいて再び襲いかかるかもしれません。現在の有効な感染予防法は、患者の早期発見と隔離、マスクなどの個人防護具の着用、うがいと手洗い・手指消毒の励行、適切な消毒剤の適用などが挙げられます。


感染症の予防と治療は、今や、一国一地域の問題にとどまらず、全世界が責任と義務を負うテーマです。各国、各人が反省や課題を持ち寄り、「再興」に備えることこそが重要な感染症対策です。

(2)感染経路と症状

コロナウイルスは、電子顕微鏡観察では表面から花弁状の突起が出ており、太陽のコロナ(光冠)のように見えるウイルスです。今まで、ヒトのかぜ様症状の起因となるコロナウイルスは知られていましたが、症状は軽〜中度であり、SARSのように重篤な病気をおこすものは知られていませんでした。また動物では、ブタ、マウス、ニワトリ、七面鳥などに呼吸器系、消化管、肝臓、神経系などの病気の起因となるコロナウイルスが知られていました。


SARSウイルスは、従来のコロナウイルスとは遺伝子的にかなり、また、この新型コロナウイルスの出現の経緯は不明です。しかし、コロナウイルスのなかで、本来ヒト以外の動物にだけ感染するはずのものが、変異を起こしてヒトに感染するようになる可能性はありますし、元来ヒトに感染していたコロナウイルスが変異を起こして、今までより病原性が強くなり、重症な病気を起こすようになる可能性もあります。


SARSは、患者と接した医療関係者や同居の家族など、患者の咳を浴びたり、痰や体液等に直接触れる等の濃厚な接触をした場合に感染し、2日〜7日、最大10日間程度の潜伏期間を経て発症します。潜伏期あるいは無症状期における他への感染力はない、あるいは、あったとしても極めて弱いと考えられています。

SARSが疑われるのは、次の場合です。

  • 10日以内にSARSの流行地域から帰国するか、又は、10日以内にSARS患者の痰や体液に触れる等の濃厚な接触があった方で、
  • 38℃以上の発熱、
  • 咳または息切れ等の呼吸器症状 がある方です。

医療機関を受診する際には、38℃以上の発熱又は咳などの症状があり、上記(1)の要件をみたす方(流行地域から帰国した方など)は、必ず事前に最寄りの保健所又は医療機関に電話で相談の上、指示に従ってください。

現在行われているSARSの治療法は、ウイルス性肺炎に対して、全身状態の管理や呼吸管理などの症状を和らげる目的で対症治療が採られています。

(3)SARSの感染予防法

SARSだけではなく、トリインフルエンザなどの多くの感染症に対して、最も効果がある自衛策は、マスクなどの防護具とうがい・手洗いです。また、感染予防に効果的とされているSARS予防のための効果的なワクチンは、現在のところ、臨床適用の報告はなく、世界各国で研究中です。

インフルエンザの場合でも、感染の初期ほど治療薬の効果も高く、早期発見と隔離が重要とされています。無理をして職場などに出て、周囲に感染を広げることは避け、自分の健康が、社会を守るという自覚を持ちましょう。

国立感染症研究所感染症情報センター(岡部信彦氏)は、SARS対策として、次の七つの原則を紹介しています。

  • 最新の発生状況を把握し、できる限り、流行地域には行かない。
  • 流行地域から帰国して、症状が出たら、家族との接触を避け、早く医療機関へ連絡。(病院や保健所へ電話)

    症状)38℃以上の急な高熱、咳などの呼吸器症状、頭痛、筋肉のこわばり、全身倦怠感、下痢

  • 十分な流水による手洗い、うがいを徹底する。(流行地域の注意)
  • 電車、娯楽施設など不特定多数の人が集まる場所はできる限り避ける。(流行地域の注意)
  • 不特定多数の人が触れる物を触った手で、口、鼻、眼などを触らない。(流行地域の注意)
  • 飛沫を防ぐよう、マスクをする。ウイルスを完全に遮断するには、医療用マスクが必要。(流行地域の注意)
  • バランスのよい食事、十分な睡眠で、免疫力を維持する。

(4)SARSウイルスに有効な消毒剤と消毒方法

SARSウイルスは、熱には弱いが、低温では長期間生存することが判ってきました。消毒作業にあたっては、できるだけ最寄りの保健所等と相談して適切な対応を取り、手袋、マスク(サージカルマスク以上の性能のもの)、ゴーグル、ガウン等を着用して、消毒作業を行ってください。家庭での個人防護具の着用例としては、「みんなでできるSARS対策(マニュアルの要約版)」(財)全国生活衛生営業指導センター(http://www.seiei.or.jp/book/sars_02.pdf)もご参考願います。

重篤な症状を引き起こすことや、本ウイルスに関する詳細については未だ明らかにされていないことなどから、厳重な消毒を行っておく必要があります。

  • 有効な消毒剤: 過酢酸、グルタラール、次亜塩素酸ナトリウム、アルコール、およびポビドンヨードなどが有効です。
  • 手指消毒: 速乾性手指消毒薬を用います。
  • 患者が退室した病室の消毒: オーバーテーブル、ベッド柵、椅子、机およびドアノブなどに対するアルコール清拭で対応してください。アルコールの代わりに、0.1%(1,000ppm)次亜塩素酸ナトリウムを用いても差し支えありません。なお、天井、壁、および床などの消毒は、喀痰などの付着がない限り不要です。
  • ベッドマット、毛布、およびシーツなどのリネン類の消毒: 80℃・10分間の熱水洗濯が適しています。ただし、80℃・10分間などの熱水洗濯が行える洗濯機がない場合には、0.1%(1,000ppm)次亜塩素酸ナトリウムへの30分間浸漬で対応してください。
  • 患者に関して発生した感染性廃棄物: 扱う際には、注射針などによる外傷に注意し、バイオハザードと明記された漏出しない強靱な袋あるいはゴミ箱に入れ、安全に廃棄してください。

なお、以上の方法で消毒する場合は、適切な感染予防装備と手順に従って行ってください。 (厚生労働省医薬安発第0509001号より抜粋 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou05/pdf/06-07-32.pdf

また、感染症情報センターでは、最近、次のように、台所用合成洗剤がSARSウイルスの処理に効果が高いことを報告していますが、大量に使用する場合は環境への影響にも注意を払う必要があります。

  • 家庭などで使用する際の一般的な消毒薬としては下記のいずれかが推奨されます。

    (1) エタノール(70〜80%)

    (2) 界面活性剤をぬるま湯に溶かしたもの(台所用合成洗剤として濃度0.5%以上)

  • 手指消毒: 速乾性手指消毒薬を用います。
  • 患者が退室した病室の消毒: オーバーテーブル、ベッド柵、椅子、机およびドアノブなどに対するアルコール清拭で対応してください。アルコールの代わりに、0.1%(1,000ppm)次亜塩素酸ナトリウムを用いても差し支えありません。なお、天井、壁、および床などの消毒は、喀痰などの付着がない限り不要です。
  • ベッドマット、毛布、およびシーツなどのリネン類の消毒: 80℃・10分間の熱水洗濯が適しています。ただし、80℃・10分間などの熱水洗濯が行える洗濯機がない場合には、0.1%(1,000ppm)次亜塩素酸ナトリウムへの30分間浸漬で対応してください。
  • 患者に関して発生した感染性廃棄物: 扱う際には、注射針などによる外傷に注意し、バイオハザードと明記された漏出しない強靱な袋あるいはゴミ箱に入れ、安全に廃棄してください。

「おおむね1リットルのぬるま湯に対して、5〜10cc程度以上の台所用合成洗剤*を加えたもの。」


* 効果が確認されているのは、食器・野菜洗浄用の家庭用合成洗剤であり、成分として直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはアルキルエーテル硫酸エステルナトリウムを16%以上含むもの。

台所用合成洗剤を溶かす場合は、冷たい水よりも、温度が高い方がより効果的です。

また、消毒作業時は、以下の点にも注意してください。

  • なるべく外窓を開け放し、十分な換気を行うとともに、可能な限り日光が部屋の中に届くようにする。
  • 手指消毒: 速乾性手指消毒薬を用います。
  • 消毒剤の噴霧は、ウイルス等が空気中に舞い上がる可能性が否定できないため、可能な限り清拭する。
  • 消毒剤が長期間残留するほど効果があるため、唾液、体液などの汚染のある場所には、十分な清拭とともに、消毒剤を用いて2度拭きすることや、界面活性剤の場合では、界面活性剤に浸したティッシュペーパーなどで汚染された場所を覆い、5分程度以上経過したあとでから拭きするなどの対応も効果的です。
  • 消毒する対象の材質などによっては、劣化、退色などを引き起こす場合もあり、心配な場合には部分的に試してから行うこと、あるいは十分な拭き取りを行うことも推奨されます。
  • 電子機器など精密機器の消毒には、消毒剤が内部に入り込み障害を起こさないよう細心の注意を払います。
  • アルコールは、引火性があり、使用時には周囲の火気に特に注意します。

(5)SARS Q&A

厚生労働省や感染症情報センターから、最新のSARSに関するQ&Aが公開されていますので参照してください。


・重症急性呼吸器症候群(SARS)関連情報 厚生労働省

→ http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou05/06-06.html


・重症急性呼吸器症候群(SARS)に関するQ&A 国立感染症研究所 感染症情報センター

→ http://idsc.nih.go.jp/disease/sars/QA/QAver2.html

(6)情報の収集と提供

  • 厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/)
  • 国立感染症研究所ホームページ(http://www.nih.go.jp/niid/index.html)
  • 東京都感染症情報センター(http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/top.html