(1)インフルエンザの歴史

インフルエンザは紀元前の時代からすでにあったといわれています。また、インフルエンザは突如流行し、短期間のうちに広範囲で猛威をふるい数ヶ月で終息することや、大流行が周期的にやってくることから、中世イタリアの占星術師たちは「星の影響(Influentiacoeli)」と考え、この感染症を「Influenza(インフルエンザ)」と呼んだそうです。18世紀の英国での流行時にこの名が使われ、その後世界に広まりました。

日本でも、古くは平安時代にインフルエンザの流行をうかがわせる記録があり、 江戸時代には「お駒風」「谷風」などと名づけられた悪性の風邪が流行したという記録があります。
20世紀にもたびたび世界的流行があり、なかでも最も有名な流行はスペイン風邪(1918年)で、世界で6億人が感染し、2500万人の死者が出ました。
その後もアジアかぜ(1957年)、香港かぜ(1968年)、ソ連かぜ(1977年)といった大流行がありました。インフルエンザは今なお恐い感染症のひとつです。
(2)インフルエンザ(流行性感冒)の特徴
【インフルエンザ(流行性感冒)とかぜ(普通感冒)のそれぞれの原因と特徴】

【インフルエンザ(流行性感冒)】の病原体はインフルエンザウィルスです。 (ちなみに、よく似た名前の「インフルエンザ菌」という細菌がありますが、これは以前インフルエンザの原因と間違われたためにこのような名称になったもので、インフルエンザの原因ではありません。)これに対し、ふつうのかぜ(普通感冒)は特定のウィルスによるものではなく、約10種ほどのウィルス(型によって細分化すると200〜300種類)によってひきおこされ、鼻から肺の入り口までの上気道に炎症が起こる症状をかぜ(普通感冒)と呼んでいます。
【インフルエンザ(流行性感冒)とかぜ(普通感冒)のそれぞれの原因と特徴】

インフルエンザは、インフルエンザに感染している人の咳やくしゃみ、会話の時に空気中に拡散されたウィルスを、鼻腔や気管など気道に吸入することで感染します(飛沫感染)。感染の多くは、この飛沫感染によると考えられていますが、飛沫核感染(ごく細かい粒子が長い間空気中に浮遊するため、感染者と同じ空間にいる人がウィルスを吸入することによっておこる感染。感染の拡大に大いに寄与する。)接触感染(環境表面に付着したウィルスへの接触などによる感染)による感染も成立すると考えられています。
特に高齢者や慢性疾患を持っている人、疲れたり睡眠不足の人は、罹患した際に重症化する可能性が高くなるといわれます(※)。
また、冬期のように空気が乾燥してくると、インフルエンザにかかりやすくなります。これは、低温で乾燥した冬には、空気中に漂っているインフルエンザウイルスが長生きできること、また、乾燥した冷たい空気でのどや鼻が弱っていることも影響していると考えられます。年末年始の大勢の人の移動で、ウィルスが全国的に広がりやすいともいわれています。
※65歳以上の高齢者、妊娠28週以降の妊婦、慢性の肺疾患、心疾患、腎疾患、代謝異常、免疫不全状態の患者の方などは、インフルエンザの罹患時のリスクが高いといわれています。
| インフルエンザ | 比較ポイント | かぜ |
| 悪寒、頭痛、突然の発熱(38度以上) | はじめの症状 | 鼻咽頭の乾燥感、くしゃみ |
| 顕著 | 筋肉痛、関節痛などの全身症状 | ほとんどない |
| 悪寒、発熱(高度)、全身倦怠感(高度)、頭痛、腰痛、関節痛、筋肉痛、鼻づまり、咳、痰、のどの痛み | おもな症状 | くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、のどの痛み、軽い発熱、全身倦怠感 |
| 中耳炎、副鼻腔炎、クループ、気管支炎、肺炎、肝障害、熱性けいれん、ライ症候群、ギラン・バレー症候群、脳炎・脳症(特に乳幼児)、心筋炎、腎不全など | 合併症 | 副鼻腔炎、気管支炎、肺炎、中耳炎、結膜炎、髄膜炎など |
| インフルエンザウィルス(日本では例年11〜4月頃) | 病原体(流行期) | ライノウィルス(冬期) アデノウィルス(年中) コロナウィルス(冬期〜春期) RSウィルス(11〜3月頃) パラインフルエンザウィルス(3〜7月頃) |
【インフルエンザはなぜ毎年流行るのか?】
インフルエンザウィルスは、膜の表面が2種類の突起で覆われており、この突起は【H】と【N】と略される抗原です。インフルエンザが毎年流行るのは、この抗原がよく変わるためです。
生体は抗原を見分けて抗体をつくります。予防接種などで一度抗体を作れば同じウィルスにはかからなくなるのですが、この【H】、【N】にはそれぞれいくつかの種類があり、さらに【H】、【N】自身も少しずつ変化しており、したがって同じ種類の【H】、【N】の組み合わせでも、抗原としては毎年少しずつ異なっています。このため、一度インフルエンザの抗体を作っても、新しい組み合わせによる抗原には無効で、再度感染してしまうことになります。