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●Dr.ヨコヤマの専門家コラム

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第40回:『殺菌効果を過信せず、消毒剤等化学薬剤の取り扱いは慎重に!(食中毒や感染症、薬害などの健康被害を起こさないために)

今年5月中旬から6月初旬にかけて、島根県と三重県の医療施設(いずれも診療所)で院内感染が発生しました。島根県の診療所では、採血針を患者37人に交換せずに使い回しが行われ、21人が肝炎(B型、C型)に二次感染したおそれがあります。また、三重県の診療所では、作り置きした点滴液にセラチア菌が汚染し、点滴を受けた患者14人が腹痛や発熱などの異常を訴え、1人が死亡しています。前者の採血器具などの使い回しは、国や地方自治体の調査などで、全国的な規模で行われていたことが明らかになり、医療施設を利用している人達は、少なからず、ショックを受けたのではないかと思います。

これ以外にも、国内の医療施設などで、医療用具や医薬品、消毒薬等の不適正な使用による医療事故(院内感染、薬害など)が発生しています。ここ2年あまり、新聞報道やインターネットなどで筆者が知る範囲でも、下表のように発生しています。

表.医療用具や医薬品等の使用が原因となって発生した事故例(微生物汚染、院内感染、薬害など)について(2006.2〜2008.4まで)
報道年月日 報道内容
2006  
2/9 ・国のガイドラインに基づく滅菌処理をせず、他の患者に再使用、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)患者の手術器具を適切な処理をせず、2004〜2005年に46件発生する。
6/23 ・埼玉県内の大学病院で、多剤耐性緑膿菌(MDRP)による院内感染が発生して6人が死亡する。
9/7 ・岡山県内の大学病院で、2004.8.20〜2006.4まで未滅菌ガーゼを265人に使用する。
10/17 ・東京都内の大学病院で、MDRPによる院内感染が発生、4人が死亡する。
12/26 ・消毒薬(グルタルアルデヒド)を使用して、看護師が化学物質過敏症を発症し、裁判所が病院側に1,000万円の賠償を命じる。
2007  
2/23 ・大阪府内の病院で、人工透析を受けている入院患者2人がB型肝炎ウィルスに感染し、1月に劇症肝炎で死亡する。
3/10 ・不良の血液製剤、日赤が3,000本出荷、発熱などの副作用報告が5件、因果関係は不明。
3/16 ・埼玉県内の大学病院で、MDRPによる感染死者が新たに5人、計11人が死亡する。(上記6/23を参照)
3/19 ・愛媛県内の病院で行われた病気腎移植で、病院の調査委員会が「病気腎移植23件不適切、がん再発の可能性」と結論する。
4/21 ・ヤコブ病、病院で7人が二次感染のおそれ、手術器具を滅菌せず、再使用する。
6/2 ・米国製のコンタクトレンズ用消毒・保存液で、アカントアメーバ角膜炎の発症患者が出て、メーカーが自主回収する。
・京都府内の大学病院が、手術に未滅菌ガーゼを使用、患者2人が術後に患部付近から膿が出るなどの症状が出る。
8/23 ・大阪府内の病院で、1999年に外傷の治療を受けた男性が感染症(エロモナス・ヒドロフィア菌による)が原因で死亡した事故、医療訴訟で遺族と和解(解決金約2,900万円)する。
9/11 ・大阪府内の大学病院で、MDRPによる院内感染が発生し、入院患者1人が死亡する。
11/16 ・汚染されたヒト乾燥硬膜の移植で、ヤコブ病を発症した男性が大津地裁に提訴へ、手術から20年後の今年5月に発症、闘病生活中。
11/21 ・新潟県内の医療施設で、入院患者1人がレジオネラ症で死亡する、超音波加湿器が感染源か。
12/6 ・関節リウマチの治療薬「エンブレル」の服用で、感染症や呼吸器障害などを引き起こし、服用者79人が死亡する。製造元は因果関係を否定せず。
12/8 ・埼玉県内大学病院で院内感染が発生、入院患者9人からバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)が検出される。
12/11 ・血液製剤「フィブリノゲン」を製造販売したメーカ−が、薬害C型肝炎で放置されたリストに収載されている418人のうち、282人を特定し、そのうち56人が死亡していることを確認する。
12/26 ・神奈川県内の病院で、患者5人がC型肝炎に感染、心臓検査にトランスデューサを使い回して感染する、他に18人が感染のおそれ。
2008  
1/17 ・C型肝炎の感染源になった血液製剤が使われた可能性がある約7,500の医療機関のリストを、国が公表する。
1/19 ・静岡県の病院(介護療養型医療施設)で、入院患者ら22人がインフルエンザに集団感染し、入院患者1人が死亡する。
1/31 ・京都府・京都市の調査で、府内の医療施設等(136施設)の2,406人を検査し、8施設の26人からVREの保菌を検出、確認する。
2/12 ・北海道内の大学病院で、MDRPによる院内感染が発生、2006年9月から2007年12月まで感染者が21人に上り、7人が死亡する。
2/15 ・新潟県内の6病院で、医療器具「トランスデューサー」の使い回しを行っていたことが、県の調査で判明、他の使い捨て医療器具を再利用していたケースも42病院に上る。
2/26 ・北海道で生ワクチンの予防接種を受けた乳児がポリオ(小児まひ)を発症、国内で8年ぶりの発症。
・静岡県内の病院で、シーツ類から感染したセレウス菌で、新生児が敗血症で死亡する。
3/7 ・東京都内の大学病院で、小児患者に有効期限が切れたインフルエンザワクチンを接種するミスが起きる。
3/10 ・岐阜県内の保健センターで、乳児を対象にしたBCG予防接種で、1本の管針(スタンプ状の接種器)を2人に使うミスが起きる。
4/12 ・兵庫県内の病院で、MDRPによる院内感染が発生し、入院患者6人が死亡する。
4/23 ・製剤「フィブリノゲン」の投与記録が残る644医療施設で、投与患者の1割(約740人)がC型肝炎に感染、国の納入先調査で判明する。
4/26 ・製剤「フィブリノゲン」を原料にした手術用「のり」を使った可能性がある34病院を国が追加公表する。

上記島根県と三重県の診療所で発生した院内感染を含め、上表に挙げられている医療事故(院内感染や薬害など)を見ても、衛生管理の取り組みに問題があり、消毒や滅菌、除菌の徹底が不十分で発生しているものが多く見受けられます。

消毒や滅菌、除菌の作業(処理)は、病院などの医療施設の他、高齢者が入所(通所)している福祉(介護)施設や、家庭で在宅介護を受けている現場でも行われています。感染症や食中毒の発生(拡散)を防ぐため、いろいろな消毒薬や除菌剤が使用されています。

これから7月に入り、日中の気温や湿度が高くなる日が多くなりますと、人の健康状態や体調が崩れやすくなります。このような時期は、食中毒や感染症(感染性胃腸炎など)にもかかりやすくなり、体力が衰えている高齢の要介護者は、とくに要注意です。彼等の健康管理は言うまでもなく、食べ物や飲み水、日用品、居住環境等の衛生管理などにも十分気を配る必要があります。

食中毒や感染症の発生を少しでも防ぐため、手洗いやうがい(洗口)、歯磨き等の励行だけでなく、必要に応じて手指や食器類・調理用具、手拭い・ナプキン類やシーツ類、マット類、浴室やトイレ等をきちんと消毒(あるいは除菌)するため、消毒薬や除菌剤を使用する機会が増え、とくに消毒薬が汎用されています。

消毒薬は、用法通りに正しく使わないと、その殺菌効果が十分に期待できません。食中毒や感染症の発生(流行)時に、有効かつ即効性がある衛生対策として、今までの経験や実績、研修等で得られた知識(情報)などから、つい消毒薬に頼ってしまいます。実際に消毒の効果を(培養等による微生物検査で)確認することなく、消毒薬への過大な期待や過信は、ややもすれば、従来からの習慣や馴れで消毒作業を漫然に行うおそれがあり、消毒の作業(処理)が疎かになって、手抜きも生じやすくなります。このような不十分な消毒になっていることにも気づかず、「消毒した」、「消毒できた」と安易に思い込んでしまう、この時が一番危険です。施設で思いがけない食中毒や感染症の発生を招いてしまいます。また、消毒薬や除菌剤など化学薬品(洗剤や入浴剤を含む)の使用法を誤って、健康被害(皮膚炎や呼吸器系疾患、化学物質過敏症、発生した有毒ガスの吸入による中毒や死亡など)や室内環境(備品・物品類を含む)の悪影響(腐食、品質劣化など)の発生をもたらすおそれがあります。消毒の効果は、自分の目で病原菌の生死を(直接)確認しない限り、その効果の有無が本当に分かリません。また、消毒薬等化学薬品の安全性も、実際に自分が上記被害を被らないと(その怖さや危険性が)分からず、(それだけに)消毒薬の選択と使用は十分に注意する必要があります。

筆者の専門コラム(第28回)を再度ご一読頂き、施設で消毒薬や除菌剤が直接的(あるいは間接的)な原因となって、上記した施設内感染や薬害事故が起こらないよう、十分に注意して下さい。

(2008.7.2)