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●Dr.ヨコヤマの専門家コラム

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第39回:『薬剤耐性菌による感染症や食中毒の発生とその対策について』

近年、感染力や毒性がより強くなった病原細菌や、抗菌剤(抗生物質など)で容易に死滅しない薬剤耐性菌が(感染症や食中毒の発生現場から)多く検出されるようになっています。

とくに後者の薬剤耐性菌については、病院等の医療施設でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、多剤耐性結核菌(とくにXDR‐TB)などが検出され、多剤耐性化した菌による院内感染で死者も出ています。この他、前記薬剤耐性を持った細菌(サルモネラ属菌やカンピロバクターなど)による感染症や食中毒も発生しています。このように、薬剤耐性菌による感染症や食中毒の発生が国内でも多くなっていることを十分に認識しておく必要があります。そして、国外で治療薬(タミフルなど)が効かない強毒性の鳥インフルエンザウィルス(H5N1型)も国外で検出され、このような薬剤耐性化したウィルスが、国内に侵入するおそれも出ています。

このような薬剤耐性を持った細菌やウィルスによる人や動物の感染(発症)事例や、薬剤耐性を持った細菌やウィルスの自然界(河川等)における分布(生息)に関する報告などが、ここ数年、新聞やインターネットなどで多く報じられるようになっています。

この薬剤耐性菌ですが、その対策を含めて(毎年)医学・歯学・薬学の関連学会などでよく取り上げられ、今年2月に開催された日本環境感染学会でも、「感染制御 新時代の幕開け」をテーマとした総会の中で、薬剤耐性菌対策の現状や成果、問題(課題)などが講演(あるいは発表、報告)されています。

また、行政(国や地方自治体など)の試験研究機関や医療施設の臨床検査現場でも、感染症や食中毒の発生時点で、培養法や生化学試験、薬剤耐性の有無を確認する検査等に止まらず、遺伝子解析手法を積極的に導入しています。PCR法などの遺伝子解析手法を駆使して、薬剤耐性菌の遺伝子型を明らかにして、その感染経路を追跡(究明)し、感染の拡大を防いで、感染(蔓延)を最小限に止める努力をしています。

このように、毒素や毒素遺伝子などの病因因子の検索や、血清型、遺伝子型等の細菌学的疫学解析を行って、二次感染の予防に役立て、薬剤耐性菌による感染の拡散(蔓延)防止を図っていく、このような感染症対策の取り組みを行うことが当たり前になっています。

このような薬剤耐性菌が、どうして出現するかについて、いろいろな原因が指摘されています。医師などの専門家によって正しい投薬(服用)や消毒法が指示(指導)されているにもかかわらず、

  1. 抗菌薬(抗生物質など)の不適正な使用(患者が服用法を間違えたり、途中で服用を止めてしまうなど)
  2. 消毒剤の選択ミスや不適正な消毒を行って、医療機器や医療用具、衛生材料、院内環境(人の手指や室内空間、室内にある備品・物品類を含む)などの消毒がきちんと行われず、生き残った菌の一部が薬剤耐性化する。とくに1)に記した抗菌薬の投与で症状が落ち着いて、快方に向かっていた患者(高齢が多い)が、服薬を止めて、耐性が出来た菌で、病状が再び悪化(最悪の場合、死亡)する事態がしばしば生じています。また、消毒剤(使用済を含む)や抗菌薬(未使用)、入院(通院)患者の排泄物(抗菌薬が含まれる)が、下水と一緒に下水処理場などから河川に排水され、河川に生息する菌(グラム陰性桿菌など)の一部が薬剤耐性化する。
この他、上記2)に関連して使用済みの消毒薬液中に生残する菌(耐性菌)が(排水と一緒に)河川等に流れ込んだり、医療廃棄物の処理(消毒・滅菌)がきちんと行われず、外部に廃棄され、医療廃棄物中に残存する薬剤耐性菌が、そのまま生き残って、再び人に感染することも指摘されています。

以上に記したことが一因になって、薬剤耐性菌による感染症や食中毒が発生しているように思われます。

福祉(介護)施設に入所(あるいは通所)している高齢者は、加齢で体の抵抗力(免疫力)が衰えて、上記薬剤耐性菌による感染症や食中毒にかかりやすく、とくに要注意です。公園や湖畔、池の辺などで、犬や猫、アヒル、白鳥などに近づいて、餌を与えている高齢者をよく見かけますが、これらの動物は薬剤耐性を持った感染症起因菌や食中毒菌などを保菌しているおそれがあり、感染予防の面から大変気になります。野生の動物(鳥類、犬、猫など)や、野生動物の糞尿などの排泄物や脱離した体毛や羽毛などを、(間接的であっても)、不用意に接触しないほうが無難です。また、抗菌薬を服用する高齢者がいる場合、医師の指示通りに服用することを勧めて下さい。そして、施設内で実施する消毒(清拭や浸漬、噴霧などによる殺菌)もきちんと行って、薬剤耐性菌の出現や薬剤耐性菌による感染を防ぐ必要があります。

鳥インフルエンザなどの新型インフルエンザの感染予防を含め、上記薬剤耐性菌による感染症や食中毒に高齢者がかからないよう、日頃から散歩など外出時の行動〔動物(ペットを含む)の接触など〕に注意を払い、外出から帰って来た時は手洗い(必要に応じて手指消毒)やうがい(洗口)を励行することが望まれます。

そして、上記衛生対策や食品の衛生管理、施設の環境衛生管理に加え、高齢者の日常の生活や健康の状態にも十分に気を配る。毎日、栄養のバランスがとれた食事(サプリメントの摂取を含む)と十分な睡眠や休養をとって、規則正しい生活を送り、健康の保持(維持)を図ることも、体力(免疫力)の低下を招かないため、非常に大切と思われます。

筆者の専門コラム(第38回;結核、第20回;サルモネラ症、第15回;緑膿菌感染症)を再度ご一読頂き、施設を利用する高齢者が、上記薬剤耐性菌による感染症や食中毒にかからないよう十分に注意して下さい。

(2008.6.3)