先月、社会福祉施設で発生した結核集団感染に関する報道が目に入りました(下表の4/19参照)。その新聞報道によると、兵庫県北播磨地域の社会福祉施設で、女性職員(30代)が結核を昨年6月頃に発症し、今年にかけて、その女性から施設の入所者や女性の家族ら計13人に感染が拡大しました。この集団感染(計15人)で入所者3人が発病し、そのうち、1人は入院し、他の2人は、通院治療中です。また、発症しなかった感染者(11名)や、それ以外に女性と接触した86人(入所者や職員ら)について、健康診断による経過観察が行わているようです。
結核は、食中毒やインフルエンザ、かぜなどに比べ、その感染発生事例が多く見受けられませんが、それでも、国内各地の事業所や大学、老人施設などで散発しています。ここ半年余り、新聞やインターネットを見て(筆者が知る)だけでも、下表に示す結核の集団感染の発生事例や結核に関連した記事が報道、掲載されています。
結核は、早期発見と適切な治療(抗生物質等抗菌薬の投与)さえ行われば、治癒する病気です。ここ数年、結核の患者は、国に報告(登録)される数だけで、国内で70,000人前後います。毎年、28,000人前後が新規結核患者として登録され、2,200人前後が死亡し、その数は、10年前に比べ、かなり減少しています。しかし、新規の結核患者の過半数は高齢者(60代以上)が占め、その一方で、若年者を中心とした結核集団感染事例も増えています。その上、多剤耐性結核菌(MDR-TB)、その中でもとくに耐性が強い“超多剤耐性結核菌(XDR-TB)”が出現するなどして、その治療が困難になっています。結核は、今、既感染者であるが加齢で免疫が低下した高齢者の発症と、菌に免疫が無い未感染の若い世代の発症の二極化が進み、それが集団感染という形で発生している感があります。結核が“過去の病気”という認識は、今、直ぐにでも改める必要があります。
国は、感染症法で結核を2類感染症に位置づけ、感染者を見つけた医師は、行政(保健所)への届出を義務づけています。さらに、同法で感染者の強制入院や就業制限の措置を講じたり、感染の疑いがある者に健康診断の受診を義務づけています。
| 報道月日 | 報道内容 |
| 2007 | |
| 10/14 | ・治療薬が効かぬ結核、年に100人(2005年度推計)、厚労省が感染防止へ研究班を立ち上げる。 |
| 12/19 | ・大阪市都島区の衣類製造会社で、従業員ら計18人が結核に集団感染し、元従業員2人を含む計5人(20〜40代、男性1人、女性3人)が発症する。 |
| 12/29 | ・山形県北村山地域で、8人(20〜70代の男女)が結核に集団感染する。 |
| 12/30 | ・島根県(保健科学研究所)が結核検査でミス、27人の判定に誤り。 |
| 2008 | |
| 1/11 | ・川崎市川崎区の保育園で、保育士(29歳、女性)が結核を発症し、担当クラスの園児ら25人を検査する。 |
| 1/25 | ・宮崎市内の刑務所で、男性受刑者41人(20〜70代)が結核に集団感染し、そのうち3人(30〜60代)が発症する。 |
| 2/8 | ・横浜市立大学付属病院で、医学生(6年生)が結核を発症、接触者検診の依頼を受けた金沢福祉保健センターが横浜市へ報告を怠る。 |
| 2/26 | ・大阪府豊中市の警察署内で、署員や留置人ら計22人が結核に集団感染し、40代の男性警察官2人と20代の男性留置人1人が発症する。 |
| 2/27 | ・WHOが「既存の治療薬が殆ど効かない超多剤耐性結核の感染例が45カ国に拡大」と発表する。2007年の年次報告では日本を含む35カ国となっていたが、新たに10カ国(ボツワナやモザンビークなど)が加わる。 ・茨城県つくば市の農業協同組合で、職員ら18人が結核に集団感染し、そのうち4人(20〜40代の男女)が発症する。昨年11月には小美玉市内の老人福祉施設で、職員ら13人が集団感染する。 |
| 3/10 | ・岐阜県飛弾市で、乳児を対象にしたBCG予防接種でミス、1本の管針を2人に使用して、市が保護者に謝罪する。 |
| 4/1 | ・秋田県北上保健所管内で、30代の男性が結核を発症し、同じ職場に勤務する同僚ら計9人に集団感染し、男性の友人(30代の女性)と同僚2人(20代の男性)が発症する。 |
| 4/10 | ・大阪市住吉区の運輸業(事務所)で、結核の集団感染があり、男性5人(50〜60代)が発症する。 |
| 4/12 | ・青森県弘前市で、市役所の職員ら28人が結核に集団感染し、6人(20〜50代の男女)が発症する。これまでに87人の接触者検診を行い、22人(10から60代以上、近親者2人を含む)の感染を確認する。 |
| 4/19 | ・横浜市大生の結核発症(2/8参照)で、市の金沢保健センターが検診を病院に“丸投げ”し、放置していたことが判明する。 ・兵庫県北播磨地域の社会福祉施設で、職員と入所者ら計15人が結核に集団感染し、4人が発症する。 |
結核(Tuberculosis)は、結核菌(Mucobacterium tuberculosis)を吸入して起きる病気で、飛沫感染(空気感染)で人→人に感染します。結核菌に感染しても、発症する確率は10人に1人程度と言われています。しかし、2007年に大阪市内の高校で発生した集団感染事件のように、結核が風邪や鼻炎と誤診され、結核に気づくのが遅れて、身近にいる多くの人に感染して、大きな迷惑をかけてしまう結果になります。
このように結核は、その初期症状が風邪とよく似ているため、
食中毒や感染性胃腸炎、風邪、インフルエンザなどの集団感染だけでなく、結核の集団感染にも十分注意して下さい。上記感染予防対策に加え、日頃から(研修の場などで)結核などの感染症に関する最新の情報を得ながら、健康管理や衛生管理、衛生慣行、環境衛生管理に心がけて、施設に入所(通所)している高齢者を感染症から守ってあげて下さい。
(2008.5.2)