HOME > 感染予防教室 > Dr.ヨコヤマの専門家コラム > 第33回:『レジオネラ属菌による汚染、感染を防ぐため、給湯設備や空調機器、加湿器などの衛生管理の徹底を!』

感染予防教室

●Dr.ヨコヤマの専門家コラム

■バックナンバー

第33回:『レジオネラ属菌による汚染、感染を防ぐため、給湯設備や空調機器、加湿器などの衛生管理の徹底を!』

11月に入って急に寒くなり、かぜやインフルエンザの発生(流行)シーズンを迎えました。体の抵抗力(免疫力)が低下している人(乳幼児や高齢者、病人など)は、前記かぜやインフルエンザ、肺炎などの呼吸器系疾患に罹患しやすくなっています。

このような感染症にかからないよう、日頃から手洗いやうがい(洗口)の励行や、感染(流行)時にマスクの着用等が不可欠になりますが、一般家庭や介護施設にある給水・給湯設備や浴場(循環式浴槽、温水シャワー設備)、加湿機能が付いた空調機器や空気清浄機、加湿器等の管理(衛生保持)にも十分に気をつける必要があります。

上記設備や機器・器具等の水を貯める(あるいは溜まる)ところ(容器、タンクなど)や、観賞魚などを飼育する水槽、敷地内にある池や噴水等には、レジオネラ属菌が汚染して、水中で生息(あるいは繁殖)しているおそれがあります。レジオネラ属菌は、土壌や淡水など自然界に広く分布し、ごくありふれた好気性グラム陰性桿菌の一種です。しかし、日和見感染起因菌の一つで、この菌が人の体内に入ると発熱や肺炎を引き起こし、体の抵抗力が低下した高齢者は生命を失うことがあり、十分に注意する必要があります。この感染症(レジオネラ症)に罹患しないよう、感染源となる給湯水や、浴槽水、水槽の水、加湿器の貯水、冷暖房機の溜め水などの水質管理(衛生確保)を行って、そこにレジオネラ属菌が生息し、増殖しないようにする必要があります。

冬の季節は、部屋の中で上記加湿機能が付いた暖房機器や空気清浄機、加湿器などが使用され、給湯水や浴槽水の温度も比較的低くなりがちで、レジオネラ属菌にとって生存(繁殖)しやすい環境になっています。

今年も、筆者が知る限り、ここ3カ月間に、国内各地の福祉(介護)施設や保養施設、温泉施設等で、浴湯などの水中からレジオネラ属菌が検出される事例が全国各紙に多く報道されています(表参照)。この中には、レジオネラ症(レジオネラ肺炎、ポンティアック熱)に罹患して、入院中に死亡した人(高齢者)もいます。

このようなレジオネラ属菌に汚染された水(給湯水や浴湯水など)を、気づかずに使用している介護施設等が(実際に、もっと多く)あるのではないかと懸念されます。表に示す各施設で発生した浴湯のレジオネラ属菌による汚染は、(各新聞の掲載内容から推察すると)、

  • こまめに清掃や洗浄が行われていない、消毒(除菌)が定期的に行われていない
  • 消毒や洗浄、清掃が不十分、いい加減であった
  • タンク内の水の取り替えや浴湯の入れ替えなどに問題があった
  • 水質検査(レジオネラ属菌の汚染調査)が実施されていない
などが(その原因として)挙げられます。

レジオネラ症やその感染予防対策については、本コラム(第3回)で(既に)記述しています。しかし、上記、レジオネラ属菌による水の汚染が全国的に発生している現状から、レジオネラ属菌に汚染、感染しないよう、家庭や介護施設等にある給水・給湯・空調等の設備や器具等について、以下に記す衛生管理(衛生対策)を(日頃から)行っておく必要があります。

  • 貯湯槽の湯水温度は60℃以上、給湯水の温度は70℃以上に保つ。
  • 給水や給湯、暖房、加湿、入浴、シャワー等の設備・器具等は、まめに清掃や洗浄を行う。また、使用頻度に応じて定期的に消毒や除菌を行い、常に良好な衛生状態が保たれるようにする。清掃や洗浄、消毒(除菌)に関する実施記録(実施内容や実施者氏名、実施日など必要な事項)を作って、一定期間(3年以上)保管する。
  • 消毒剤や除菌剤は、専門家や薬剤メーカーの助言を得ながら、適切な薬剤を選び、消毒や除菌を適正に行う。標準的な消毒(除菌)実施マニュアルを対象(設備、器具、場所)毎に作成して、誰が(いつ)行っても、同じ消毒(除菌)効果が得られるようにする。
  • 給湯や浴湯、加湿などに使用する水は、レジオネラ属菌による汚染が生じていないか、定期的に自主検査する。
表.ここ3カ月間に、国内でレジオネラ属菌による汚染や感染が問題となった報道(例)
月/日 報 道 内 容
2007/8/18 ・宮崎県延岡市のレジャー施設で、展望風呂の湯から基準値の40倍を超えるレジオネラ属菌が検出される。(宮崎日日新聞)
2007/9/12 ・宮崎県宮崎市のリゾートホテルで、女子打たせ風呂の湯から基準値の39倍のレジオネラ属菌が検出される。(宮崎日日新聞)
・滋賀県草津市の市民交流施設で、露天風呂の湯から基準値を超えるレジオネラ属菌が検出され、8/22から使用中止、9/14から使用を再開する。(京都新聞)
2007/9/13 ・香川県高松市の市立老人福祉センターの温泉施設で、浴槽水から基準値を上回るレジオネラ属菌が検出され、浴場の営業を中止する。(四国新聞)
2007/9/22 ・岩手県北上市の市営温泉施設で、浴槽から基準値を超えるレジオネラ属菌が検出される。(岩手日報)
2007/10/5 ・宮崎県宮崎市のリゾートホテルで、女子打たせ風呂の湯から基準値の39倍のレジオネラ属菌が検出され、営業を休止、5日に安全が確認されたとして営業を再開する。(宮崎日日新聞)
2007/10/6 ・日立市の国民宿舎で、浴槽水から基準値の5倍に相当するレジオネラ属菌が検出される。(東京新聞)
2007/10/7 ・香川県東かがわ市の第三セクターが経営する保養施設で、浴場の温泉水から基準値を超えるレジオネラ属菌が検出されながら、県に報告せず、営業を続ける。(四国新聞)
・香川県東かがわ市直営の温泉施設で、浴場の湯から基準値を超えるレジオネラ属菌が検出され、女性浴場を使用中止する。(四国新聞)
2007/10/23 ・東京都足立区の温泉付きマンションで、循環式温泉給湯設備から(国の基準値を超える)最大8,900倍のレジオネラ属菌が検出される。(朝日新聞)
2007/10/24 ・宮城県大崎市のデイケア施設で、入浴施設の湯から基準値の72倍のレジオネラ属菌が検出される。(毎日新聞)
・千葉県浦安市の保養所で、基準値の430倍を超えるレジオネラ属菌が検出される。(毎日新聞)
2007/10/27 ・京都府福知山市の温泉施設で、展望大浴場の湯から基準値の72倍のレジオネラ属菌が検出される。(京都新聞)
・三重県四日市の老人福祉センターで、浴場の湯から基準値の40倍を超えるレジオネラ属菌が検出される。(毎日新聞)
2007/11/9 ・新潟県新発田市の温泉施設で、80代の男性がレジオネラ症に罹患する、露天風呂の湯から基準値の9.5倍に相当するレジオネラ属菌が検出される、(新潟日報)
2007/11/14 ・新潟県の上越保健所管内で、発熱や呼吸困難、肺炎症状を訴え、10月初旬に医療機関を受診した50代男性がレジオネラ症と診断される。(新潟日報)
埼玉県さいたま市の老人福祉センターで、浴槽の湯から最大で基準の2倍のレジオネラ属菌が検出され、男女浴場の使用を中止する。(産経新聞)
2007/11/21 ・新潟県新潟市の医療施設で、60代男性がレジオネラ症で死亡した件で、市が「家庭用の超音波式加湿器が感染源の可能性が高い」と発表する。(新潟日報)

筆者のコラム(第3回)をもう一度ご覧になっていただき、家庭や介護施設等でレジオネラ属菌による汚染、感染が発生しないよう、その侵入経路や感染源などをきちんと把握して、可能と思われる有効な感染予防対策を的確に取り組んで下さい。

(2007.12.21)