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●Dr.ヨコヤマの専門家コラム

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第31回:『感染症(食中毒を含む)の予防に、屋内外に生息する有害生物も要注意、環境衛生管理の取り組みを!』

今年の夏は記録的な猛暑となり、8月に日中の最高気温が35℃以上の日々(猛暑日)が続き、国内で約4,000人が熱中症で救急搬送され、死者も出ています。これも地球温暖化やヒートアイランド現象が一因と言われていますが、季節の変わり目となる9月を迎えても、この暑さが収まらず、体調を崩す人が(老若男女を問わず)多く出て、前記熱中症だけでなく、食中毒や感染症にもかかっているようです。

とくに今年は、ノロウイルスに加え、病原性大腸菌O157による食中毒や感染症が幼児を中心に発生して死者も出ています。また、乳幼児など年少者に多く発生する麻疹(はしか)や百日咳が、高校生や大学生など年長者に流行し、9月に入ってもはしかの流行がまだ続いています。さらに、上記O157以外の病原性大腸菌や黄色ブドウ球菌、サルモネラ属菌、腸炎ビブリオなどの細菌性食中毒が(相変わらず)国内各地で発生しています。

そして、日本脳炎(コガタアカイエカで感染する)が西日本地域で発生(流行)し、上記地球温暖化の影響と思われますが、西日本地域で生息している蚊(デング熱やチクングニア熱などの感染症を引き起こすウィルスを媒介するヒトスジシマカなど)が、現在、東北地方の秋田県や岩手県まで北上し、その生息が確認されています。また、デング熱やチクングニア熱、ウエストナイル熱などの感染症を引き起こすウィルスを持ったネッタイシマカが、国外から侵入し、国内に住み着いたり、熱帯(亜熱帯)地域から前記感染症に感染した旅行者(滞在者)が帰国して、何らかのきっかけで、人→蚊(ヒトスジシマカなど)→人へと感染するおそれも十分に考えられます。国内でまだ感染の発生例がないウェストナイル熱などの感染症が、いつ発生(流行)しても不思議でない状況にあると言っても過言でありません。

このように、私達の身近に生息する蚊は、日本脳炎やデング熱、ウエストナイル熱などの感染症を媒介する厭な生物です。蚊の存在を軽く考え、油断して、食中毒やかぜ、肺炎、インフルエンザの予防の方へ目が向いて、蚊の対策(駆除)を怠り、いい加減にして放置しておくと、上記感染症の発生を招くことになりかねません。

また、感染症は、日常の生活環境や自然環境に生息しているネズミやダニ、シラミ類、家畜、ペット(愛玩動物)などの動物からも、種々の感染症が人に感染して起きています(下表参照)。さらに、屋内に生息するハエから病原性大腸菌O157が検出された報告もあり、ハエやネズミ、ゴキブリ等を介した食中毒や感染症の発生も否定できなくなっています。その他、コンタクトレンズの使用で目に炎症(アメーバの汚染による角膜炎など)が生じたり、ダニやかび類が原因となってアレルギー性の皮膚疾患(皮疹など)や呼吸器系疾患(夏型過敏性肺臓炎など)などに罹患する人も増えています。

とくに屋内にある加湿器や冷暖房機、給湯・浴槽水、観賞生物の飼育ケージや水槽、室内壁面や家具裏面等に繁殖する微生物(とくにグラム陰性桿菌類やカビ類)は、室内に汚染(拡散)して、人に感染症を罹患させるだけでなく、室内環境の悪化(異臭・不快臭の発生や美観を損ねるなど)をもたらす原因にもなっています。

このように、屋内や屋外周辺に生息する生物によって、健康被害(食中毒や感染症など)を被らないよう、室内外の環境衛生管理にも十分注意する必要があります。

人が多く集まる場所(施設)では、食中毒や感染症の予防対策として、通常、日頃から手洗いやうがい、身だしなみの励行を心がけています。また、食中毒や感染症が発生したり、その発生(流行)時期には、上記手洗いなどの衛生慣行に加え、消毒薬や熱湯水などを用いた清拭や浸漬、散布、噴霧等による消毒など必要な衛生対策を行って、感染(発症)者や食品や食器類、食堂、厨房、トイレ、浴室、(手が触れやすい)物品類等の衛生管理を厳重に行っているようです。しかし、自分の身近にいる生物(下表参照)からも感染症にかかるおそれがあり、油断は禁物で、十分に注意する必要があります。

表.住環境で健康被害(食中毒や感染症など)を引き起こす感染(媒介)動物等(例)
感染(媒介)源〈例〉 引き起こされる病気(感染症)(一例) 原因となる病原体
飼育動物等 回虫症、狂犬病、皮膚真菌症など 寄生虫、ウイルス、かび類など
猫ひっかき病、トキソプラズマ症、皮膚真菌症など 細菌、かび類、原虫など
カメやイグアナ類 サルモネラ症など 細菌など
ハト クリプトコッカス症など かび類など
小鳥類 オウム病など クラミジアなど
ネズミ 腎症候性出血熱、ペストなど ウイルス、細菌など
日本脳炎、デング熱など ウイルス
ダニ類 疥癬症、アレルギー性疾患など ダニ
シラミ類 毛シラミ症、刺咬症など シラミ
スリッパー、マット類 水虫など 白癬菌など
水関係 加湿器
冷暖房機
空調冷却水
浴槽水、給湯水
飼育水槽、生け花、
貯水槽など
呼吸器系疾患(肺炎、レジオネラ症など)、急性胃腸炎など グラム陰性桿菌類(病原性大腸菌、レジオネラ属菌など)、かび類など
コンタクトレンズ 角膜炎など アメーバーなど
スリッパー、マット類 水虫など 白癬菌など

近年、人が多く集まる場所(福祉介護施設など)で発生する感染症は、前回のコラムでも記したように、その発生(感染)の形態や発症症状が複雑多様化し、その対応も(以前と比べて)難しくなり、従来と異なる質やレベルの高い取り組み(衛生対策)が求められています。感染症が(突然)発生して、その対応に慌てて、過去の経験や慣れ(習慣)から「消毒や除菌を、取り敢えずやっておこう!」と、あまり深く考えず、安易に消毒(化学的、物理的な消毒法)や除菌(除菌剤の使用など)などの衛生対策を実施するケースが多く認められます。確かに、消毒や除菌は、最も期待できる殺滅法として、微生物学的清浄化に欠かせない大切な衛生対策ですが、総合的な衛生管理を取り組む中で、効果や安全性を十分に考慮しながら、きちんと使い分け、適正に行わないと意味がありません。また、消毒や除菌が上記有害生物管理とうまく組み合わされて実施されないと、他の目に見えない、忍び寄ってくる感染症(上表参照)まで全てを防ぐことは困難です。

そのためにも、前回のコラムで記した食品類の衛生管理と人の健康管理や衛生慣行に、建物や敷地の環境衛生管理を加えた総合的な衛生管理を、組織的かつ合理的、効率的に取り組んで、感染症の発生を起こり難くして、その発生を零に近づけていく努力が必要になります。目に見える部分から目に見えない部分まで衛生管理の対象を広げて、各対象毎に衛生管理の内容(方法)を決めて、必要かつ妥当な衛生対策を講じて、感染症の感染源を無くしていく必要があります。前回のコラムの中で示した表などを参考にして、一度(あるいは適当な間隔を置いて)、自ら実施(実践)する衛生管理の実状(内容)を点検確認する。もし、問題点が見つかれば、それを改善(是正)して、少しでも質(レベル)の高い衛生管理を行って、感染症の発生(拡散)を低減、防止していくことが(今)求められていると思います。

(2007.10.22)