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●Dr.ヨコヤマの専門家コラム

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第29回:『介護施設で発生する感染症を予防(撲滅)するため、介護スタッフの教育・研修の強化、充実を!』

わが国は、介護保険制度の開始時から、介護サービスの事業者数と利用者の数が増え、昨年10月1日の時点で通所介護と訪問介護が、それぞれ19,346事業所(利用者962,838人)、20,911事業所(利用者889,246人)となっています。また、介護を行っている老人福祉施設や老人保健施設、療養型医療施設と在所者の数も、それぞれ5,719施設(在所者393,451人)、3,391施設(在所者279,684人)、2,932施設(在所者111,183人)まで増えています(厚生労働省発表、平成19年5月28日、「平成18年介護サービス施設・事業所調査結果速報」から)。

そして、この介護施設が年を追って増加するに伴い、介護施設で発生する食中毒や感染症も増加傾向にあります。ここ数年、特別養護老人ホームなどの介護施設でノロウイルスなどのウイルス性食中毒や病原性大腸菌などの細菌性食中毒の発生が目立っていますが、感染症も多種多様に発生しています。過去3年間、新聞やテレビ等に取り上げられた発生事例をみても、介護施設でインフルエンザや肺炎(誤嚥性肺炎など)、かぜなどの呼吸器系疾患に加え、ノロウイルスや病原性大腸菌(例;O157)、クロストリジウム属菌(例;Clostridium difficile)などによる感染症(胃腸炎など)が国内で散発しています。前記感染症にかかって、高齢の入所者が死亡するケースも出ています。

また、介護施設では、上記入所者だけでなく、介護に携わる職員も感染症にかかっています。国が第5回介護施設等の在り方に関する委員会(平成19年6月20日)に提出した参考資料(日本労働組合総連合会提供;「介護保険三施設調査結果概要」、調査対象は163施設、その内訳は介護老人福祉施設−特別養護老人ホーム114施設、介護老人保健施設32施設、介護療養型医療施設17施設)をみても、ここ2〜3年間に感染症にかかった人(介護職16.3%、看護職10.2%)が1割以上います。介護スタッフが感染した主な病気として、疥癬症やカンジダ症、インフルエンザなどを挙げています。前記感染症の他、施設で入所者や職員が感染している病気として、筆者が知る範囲でも、水虫や毛じらみ症、細菌感染による褥瘡(床ずれ)の悪化(化膿)、毛包炎、おでき(?)、化膿性汗腺炎などが発生しているようです。

このような感染症の発生(拡散)を防ぐため、介護施設では、職員を対象に食中毒対策に加え、感染症対策や感染症に関する研修や教育を実施しているようです。しかし、上記参考資料をみると、施設を利用するサイドからみて、その実施状況に疑問や不安を抱いてしまう調査結果も出ています。調査した163施設の職員2,749人のうち、介護(あるいは看護)の資格取得時と、施設に勤め始めて、今日まで、感染症対策や感染症に関して、一切の研修や教育を受けたことがない職員が介護職と看護職で、それぞれ23.3%、16.0%もいることが記されており、若干心配になります。

さらに、筆者が訪問、見学した介護施設を見る限り、介護業務が激務となる中で、介護の合間に感染症対策や感染症に関する研修や教育が一応実施されていますが、研修や教育にかける時間が少ない。その実施内容も標準化されておらず、個々の介護施設でばらつきが認められます。感染症対策や感染症に関する知識や情報、技術に関する教育・研修を強化、充実して、どの施設でも標準化(統一化)された方針の下で、感染症対策が容易かつ効果的に取り組めるようにすることが望まれます。それが介護の質の向上と、良質の介護サービスを提供することにつながっていくことは言うまでもありません。

上記したように食中毒や感染症の発生状況がかなり様変わりし、食中毒や感染症が(年齢を問わず)発生する傾向が顕著に認められ、介護施設でも、実際には、上記調査結果より数倍〜数十倍多い感染症が発生していると思われます。加齢等で体の抵抗力(免疫力)が衰えている高齢者(複数の慢性疾患や認知症に罹患している人が多い)が入所して、安全かつ安心して介護を受けられるよう、介護施設でも、感染予防対策を真剣に、かつ積極的に取り組まざるを得なくなっています。

現在、施設で発生する感染症は、複雑多様化した感染形態や発症症状を示すものが多くなり、このような感染症を従来の食品衛生管理を中心にした食中毒対策だけの取り組みだけで防ぐことは難しくなっています。前記食品衛生管理と、環境衛生管理や人(施設職員や入所者など)の健康管理や衛生慣行などが効果的、効率的に連携して取り組まれることによって、上記感染症の感染予防が可能になると筆者は思っています。

それだけに、施設内感染の発生(拡散)防止(いわゆる感染症の撲滅)に向けて施設職員を対象にした上記教育・研修がより重要になります。現時点で実施している教育・研修について、感染症対策の専門家や消毒薬メーカー等の協力を得て、適切な指導と助言を受けながら、その内容を見直し、問題点があれば是正(改善)しながら、感染症対策や衛生管理に必要な教育・研修を(十分な時間をとって)実施する。教育・研修の中で、食品(食材)や飲料水、人、施設環境全般に関する衛生管理や感染症対策(食中毒を含む)の標準的な取り組み方や、これに関連する知識や情報、技術等を習得して、介護現場に活用、実践していく。施設に勤務する職員全員が一体となって、統一化した方針(方法、手法)で、誰が行っても同じ効果(成果)が上げられるよう、感染症対策を取り組んでいくことが必要になっています。

本年4月に施行された改正医療法で国から示された指針やガイドライン等を参考にして、自施設の状況に合った適切な感染予防対策が取り組める組織体制(感染予防対策チーム)の設置と、感染予防指針及び感染症(食中毒を含む)対策実施マニュアルの作成等を早急に行い、指針や実施マニュアルを遵守しながら、感染症の発生(拡散)を防いでいくことが、施設の利用者からも望まれていると思います。

(2007.08.21)