今季は、昨季と比べて感染症や食中毒の発生(流行)状況が若干異なり、インフルエンザは3月下旬になってようやく流行ピークが過ぎました。また、ノロウイルスによる急性胃腸炎や食中毒の発生も、4月に流行ピークが過ぎたようですが、今も国内各地で散発しています。
さらに、麻疹(はしか)が(6年ぶりに)関東地方(東京都や埼玉県など)を中心に全国的に発生し、乳幼児より年長の子供や大人(とくに学生)に多く罹患し、これから流行ピークを迎えようとしています。国は麻疹に感染しないよう、ワクチンの接種や、集団発生している場所や感染(発症)者に近づかないよう注意を呼びかけています。その外、病原性大腸菌(腸管出血性大腸菌O157など)による食中毒や感染性胃腸炎も相変わらず国内各地で発生しています。
そして、今年も5月初旬から日中の気温が25℃を超える日が出て、6月に入り、食中毒や感染性胃腸炎が起こりやすいシーズンを迎えました。これから7月にかけて、梅雨に入ると、健康状態や体調も崩れやすく、室内で過ごす時間が多い高齢の要介護者は要注意で、彼等の健康状態や室内の衛生状態に十分気を配る必要があります。
気密性が高い室内は、ガラス窓に結露が生じなくても湿気がこもります。その上、人や物品の出入り等で塵や埃が室内で浮遊、滞留したり、床や備品、生活用品の表面等に溜まり、不衛生な状態になります。室内(物品類を含む)の清掃や掃除、換気、不要物品の片付けなどを怠ると、前記塵埃などを栄養源にしてダニなどの微小害虫だけでなく、細菌やかび等が生息、繁殖します。その結果、異臭(かび臭など)を発生したり、壁や物品等の表面が汚くなり、美観を損なって、人に不快感を与えたり、いろいろな健康被害(アレルギー性疾患や呼吸器系疾患など)が起こりやすくなります。そうでなくても、上記感染症や食中毒の発生が減少せず、国内各地で感染力の高いはしかが発生(流行)し、予防接種を受けていても免疫が弱くなっているおそれがあり、いつ前記健康被害を被るのかと大変心配になります。普段から高齢者の健康状態に気を配るとともに、居住(生活)環境の衛生管理や食品(おやつを含む)の衛生管理を徹底して、上記健康被害や食中毒の発生(拡散)を防ぐ必要があります。
このような状況で、上記衛生管理(衛生対策)を取り組む中で、様々な抗菌(抗菌加工を含む)製品(抗菌グッズ)が汎用されています。高齢者が入所(通所)する介護施設の中を見渡しても、浴室やトイレ、洗面所、台所、食堂、調理場などで使用する備品や日用品の他、家電製品(洗濯機、冷蔵庫、掃除機・クリーナーなど)、空気清浄機器、浄水器、除菌ティシュなどの衛生用品、寝具類、カーペット類、カーテン・ブラインドなど室内備品、壁紙、クロス、タイルなどの抗菌製品が幅広く目に付きます。抗菌製品と気づかずに使用している場合も多く見受けられます。
これらの抗菌製品は、低毒性の抗菌性化合物(無機系、有機系)が使用され、室内環境に存在する一般細菌(芽胞菌を除く)やかび類に対して、殺菌や増殖抑制の効果が期待されています。しかし、安全性(毒性や副作用など)に関するデータが不十分な抗菌製品や、使用されている抗菌性化合物(種類や含量)が不明な抗菌製品も市場に数多く出回っているようです。それだけに、抗菌製品の使用にあたっては、十分に注意して下さい。肌が敏感な人など個人差もありますが、抗菌製品を使用して皮膚が荒れたり、接触皮膚炎などの薬害が生じるおそれがあります。また、抗菌製品の使用で皮膚常在菌以外の(抗菌性化合物が効かない)雑菌が皮膚表面に住み着いて、皮膚常在菌のバランスが崩れ、これが皮膚の荒れや湿疹、皮膚炎の発生や耐性菌の出現などにつながることもあります。抗菌製品を過信して、安易に使用(乱用)することは(安全性確保面からも)避ける必要があります。
抗菌製品は、先の専門コラム(第18、19回)でも記したように、ある程度の殺菌や増殖抑制の効果は期待できます。しかし、その使用場所や使用時期、使用方法などで、その効果(あるいは効力の持続性)はかなり異なり、抗菌製品を使用していても食中毒や感染症が発生しています。感染症や食中毒の発生を抑え、防ぐためには、やはり上記日常の環境衛生管理や食品衛生管理が伴った感染予防対策が必要と思われます。その中で抗菌製品を、上手に活用したほうが無難です。抗菌製品の使用で衛生意識が高くなり、感染症や食中毒に大きな関心を持ち、その感染予防の取り組みに深い理解と協力を得ることが期待できます。
そう言った意味で、抗菌製品への過信や安易な使用を避け、先ずは日常の健康管理や食品衛生、衛生慣行、環境衛生などに十分気を配って、健康な身体や衛生的な生活環境を維持することが重要と思われます。食中毒や感染症の予防に、安全で確実な効果が期待できる手洗い消毒やうがい(洗口)の励行や、清掃や掃除、換気、微生物(とくにかび類)の除去など専門コラム(第19回)で記した遵守事項を日常、定期的に実施して、その効果を点検、確認し、問題点があれば改善していくことが必要と思われます。
そして、抗菌製品やうがい薬、洗口液、消毒薬、洗浄(除菌)剤などを使用する時は、その入手(購入)時に医師や薬剤師、看護師などの専門家に必ず相談し、彼等の指導、助言に従って、その選択を誤らず、正しく使用して下さい。
食中毒や感染症の発生を心配せず、健康で快適な生活ができるよう、高齢者がいる福祉(介護)施設も、今年4月に施行された改正医療法で国から提示された指針やガイドラインを参考にして、施設が一体となって自施設の状況に合った適切な感染予防体制を構築、整備していくことが望まれます。感染予防指針や感染症(食中毒を含む)対策実施マニュアルの作成や、感染予防対策チームの設置と活動(点検・確認等の記録や、問題点や改善内容など実施した必要な活動内容を記した書類の作成と保管を含む)、施設の環境衛生管理の実施などが必要になっていると思われます。
(2007.06.22)