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●Dr.ヨコヤマの専門家コラム

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第22回:『塩素系消毒剤の適正使用を 〜より“安全”で“効果”がある消毒を実施するために〜』

今年(2007年)も、この時期に例年通り国内各地でかぜやウイルス性の感染症、インフルエンザに罹患した高齢者や子供、乳幼児が多数出ています。昨年11月から多発していたノロウイルスによる食中毒や感染性胃腸炎は、その感染予防対策の取り組みが徹底され、効果が出ているためか、1月中旬に入って流行のピークを越えた感があり、その発生件数が減少傾向にあります。しかし、食品を介した経口感染だけでなく、感染〈発症〉者の便や嘔吐物を介した空気感染や感染〈発症〉者(便や嘔吐物に触れた人を含む)が触れた調理用具や食器類を介した接触感染、便や嘔吐物が付着した物品等から他の人に二次感染するなど感染形態が多様化して、福祉(介護)施設などで(まだ)死者が出ています。

このノロウイルスによる食中毒や感染性胃腸炎だけでなく、高齢者がいる福祉介護施設や家庭などでは、この冬期にかぜやインフルエンザが相変わらず発生し、肺炎を併発して死亡する人が出ています。さらに、乳幼児の間でもロタウイルスなどのウイルスによる感染性胃腸炎(嘔吐下痢症、白色便下痢症)が、相変わらず発生しています。また、宮崎県清武町の養鶏場で、高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)が発生し、鶏の大量死が起きています。今のところ、鳥から人へ感染するインフルエンザに(まだ)変異していないようですが、変異しない保証は全くなく、人への感染が心配されます。

このようなウイルスによる食中毒や感染症の多発や上記感染形態の多様化が認められる中で、福祉(介護)施設や宿泊施設、保育・教育施設、一般家庭などの消毒現場で、薬用石鹸や消毒剤(アルコール系、界面活性剤系、ビグアニド系など)に加え、塩素系の消毒剤(漂白剤を含む)が使用されています。これらの施設は病院等の医療施設と異なり、使用する消毒剤の種類は(安全確保面から)限られ、従来から汎用されている消毒剤だけで、全ての微生物やウイルスを殺滅することは不可能です。そこでノロウイルス対策用として塩素系の消毒剤が導入されています。

塩素系の消毒剤として、さらし粉や次亜塩素酸ナトリウム、有機塩素化合物(クロラミンTなど)がありますが、その中で次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする消毒剤が多く利用され、ノロウイルスを含めたウイルス性の食中毒や感染症の発生(拡散)防止に役立っています。

次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする消毒剤は、上記塩素系以外の消毒剤に比べて効力が大きく、細菌(芽胞菌を除く)や真菌(かびや酵母)、藻類など広範囲の微生物に有効で、ノロウイルスなどのウイルスも不活化して殺します。この薬剤は、さらし粉(有効塩素30.0%以上)や液剤(1〜10%の水溶液)として市販され、薬局等で安価で入手でき、その使用法も比較的簡単で、消毒と漂白、脱臭が同時に出来る利点があり、一般家庭でも重宝がられ、常備品の一つになっています。微生物が原因となって生成する汚れ(ぬめりなど)の除去やかび取り、消臭、脱色を目的として、浴室やトイレ、台所等で使用されています。

しかし、この薬剤は無臭でなく、特異臭(塩素ようの臭気、刺激臭)を発し、たん白質など有機物との共存で分解しやすく、消毒効果の持続性もあまり期待できません。その上、薬剤自体、酸化力が大で毒性も強く、金属やプラスチック類、繊維製品などに腐食性があり、薬液のpHが酸性になると、有毒な塩素ガスを発生するなどの短所もあります。生体への影響も、塩素系以外の上記消毒剤と比較して健康リスクが高く、(個人差がありますが)、消毒(清拭や浸漬など)を行っている時に、気分が悪くなったり、目に炎症(角膜障害など)を起こすことがあります。さらに鼻・喉・気道など呼吸器を刺激して炎症(咳嗽や粘膜浮腫、発赤など)を引き起こしたり、皮膚に接触して皮膚炎などの被害を被ることがあります。これらの薬害は、消毒の処理(作業)をしている時だけでなく、消毒の処理(作業)をした後(数日間経過して)気づく場合も多く見受けられ、その使用(取り扱い)に十分注意する必要があります。皮膚に発疹などの過敏症が出やすい人も、塩素系の消毒剤を(原則として)取り扱わないほうが無難です。

このように、塩素系消毒剤は、その使用対象や使用法が(他の薬剤に比べ)ある程度限定され、塩素系消毒剤を用いて室内の壁面や床面、物品・器物の表面等を消毒したり、糞便や嘔吐物、汚物などを消毒する時は、

  • 薬液が目や口、鼻の中に入らないよう、出来るだけマスクやゴム手袋、ゴーグル(眼鏡)などの保護具を着用する。
  • 万が一、薬液が皮膚に付着した時は、直ちに石鹸と水でよく洗い流す、また、目や口、鼻の中に入った場合は、水道水で十分に洗眼、洗鼻、うがい(洗口)をした後、直ちに医師の受診・治療を受ける。
  • 薬液は分解しやすく、用法・用量を守って、使用時に必要な量だけを用時調製して全て使い切る。一度使用した薬液や保存した未使用の薬液は、有効塩素濃度(遊離塩素濃度)が低下して効力が減退しているため、繰り返し使用しない。使用した薬液や不要になった薬液は、大量の水道水で希釈(数百倍以上)して無害化し、下水に廃棄する。
  • 薬液を用いて清拭や浸漬、散布して消毒を実施している間や消毒した後は(原則として)室内の窓や扉などを開放して換気を行う。消毒後は、消毒対象物等に残留する薬剤を、水拭きなどで除去する。
  • 消毒対象物(被消毒物)の周辺に、薬剤で悪影響を受けるおそれがある物品等が存在する場合、それらを他の場所に移動したり、養生を行った後に、消毒を実施する。
  • 消毒対象物が汚れている時は、消毒前に洗剤等で洗浄して汚れ(有機物)を出来るだけ除去してから消毒する。
  • 消毒対象物毎に標準的な作業手順を決めた消毒実施マニュアルを作成、用意して、誰が実施しても同じ消毒効果が得られるようにする。消毒の処理(作業)はマニュアルの手順通りに実施して、二次汚染を防ぎながら、ていねいに行う。
  • 消毒法や薬剤の使用で疑問が生じたり、消毒の実施中に上記薬害等のトラブルが生じた時は、購入先の薬局や製造メーカーに早く問い合わせて、正しい使い方や的確な応急措置が迅速に出来るようにする。上記消毒が原因と思われる薬害(咳き込んだり、接触皮膚炎や過敏症など)が発生した時は、症状が悪化しないよう、早く医師による受診・治療を受けて下さい。

以上に記した注意事項を守りながら、塩素系の消毒剤を正しく使用して、薬害が生じないように十分気をつけて下さい。塩素系消毒剤は、高い消毒効果が確実に期待できますが、安易かつ不適正な使用で予期しない薬害も生じやすく、健康リスクや環境リスクが高い薬剤です。日常的に汎用されるアルコール系や界面活性系などの消毒剤に比べ、危険な薬剤であることを十分に認識した上で、塩素系消毒剤を上手に活用して下さい。「塩素系の消毒剤だから・・・・」と過信して、その消毒効果を過大評価して、安易に使用(乱用)することは禁物です。消毒剤の効果は、塩素系消毒剤といえども万能でなく、その使用範囲や使用方法などで効力も限られてきます。その効果だけに頼って、施設(室内)の清掃(拭き掃除)や洗浄、換気など一般的な衛生管理を疎かにすることは、絶対に避けて下さい。

前回のコラムで記したように、食中毒や感染症の感染形態が多様化し、“人”と“食品”に“環境”を含めた総合的な食中毒対策や感染症対策の効果的、効率的な取り組みが、食品の製造(提供)施設や福祉(介護)施設、宿泊施設、教育・保育施設などで求められています。食中毒や感染症(院内感染)の集団発生が生じないよう、上記施設は、今以上に、衛生教育や衛生啓蒙を図って、個人及び組織全体の衛生意識を高め、人や環境の安全を確保する。その取り組みの中で上記消毒剤を有効活用して、個人が行う衛生慣行と施設の食品衛生管理や環境衛生管理をより徹底して、食中毒や感染症の発生(拡散)を予防(防止)する必要があります。