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第20回:『サルモネラ属菌による食中毒、感染症の発生と予防について』

近年、国内の福祉(介護)施設や保育園などでノロウィルスや腸管出血性大腸菌O157、カンピロバクターによる食中毒や感染性胃腸炎が(時季を問わず)続発しており、その発生防止が急務となっています。しかし、前記ノロウィルスや腸管出血性大腸菌O157、カンピロバクターだけでなく、サルモネラ属菌による食中毒や感染性胃腸炎も国内で散発しています。ここ4カ月間、私が購読する新聞(朝日新聞)を見ても、サルモネラ属菌が原因となった食中毒や感染性胃腸炎(サルモネラ症)の発生報告や、それに関連した記事が、下表に示す内容で報道されています。

〔表:サルモネラ属菌による健康被害を取り上げた掲載記事例〕

(月/日) (記事の内容)
7/11 大阪府東大阪市で、4月の始めからサルモネラ属菌(SE菌)による食中毒で入院していた女子児童(9歳)が急性脳症で死亡する、生卵で感染の疑い。
7/24 大阪府摂津市の私立幼稚園で、園児ら139人が食中毒、うち14人からサルモネラ属菌を検出する。
9/15 (社)日本養鶏協会が調査した204採卵養鶏場のうち、26%にあたる54採卵養鶏場の鶏舎と鶏からサルモネラ属菌が検出される、農水省も調査へ。
9/19 新潟県に住む生後7カ月の乳児が、5月にサルモネラ症に感染し、敗血症と診断され、抗生剤で治療を受ける、ペットのケヅメリクガメから感染。
10/5 大阪府門真市の事業所で、9月に従業員65人が食中毒、うち2人からサルモネラ属菌を検出する、給食受託会社は3日間営業停止。

上記サルモネラ属菌による健康被害の発生については、このコラム(第12回)で食中毒だけでなく、飼育ペット(犬や猫、カメなどの爬虫類など)から移る感染性胃腸炎があることを紹介して、皆様に注意を促しました。しかし、生卵やその加工品を食べることが多い食生活習慣や、ペットと接触する機会が多くなっているせいか、上表に示すようにサルモネラ属菌による食中毒や感染性胃腸炎が(依然として)国内で発生しています。

サルモネラ属菌はグラム陰性桿菌で、人や家禽やペットなどに広く分布しています。上記食中毒や感染性胃腸炎を引き起こすサルモネラ属菌は20種以上存在し、サルモネラ・エンテリティディス(SE菌)とサルモネラ・ティフィムリウム(ST菌)がよく知られています。ここ数年、サルモネラ属菌の多剤耐性化が進む傾向が見受けられ、食中毒等の発生現場で数種類以上の抗生物質に効かないSE菌やST菌が検出されています。最近の食中毒や感染性胃腸炎の発生は、殆どの場合、前記サルモネラ属菌が汚染した食品(鶏卵や食肉など)の摂取やペットとの接触が原因となって起きています。

そして、とくに上記多剤耐性化したサルモネラ属菌による食中毒や感染性胃腸炎が、ここ数年来、健康を害したり、体力が弱っている人達(とくに幼児や高齢者など)に多く発生しています。この主な発生理由として、上記サルモネラ属菌に汚染した生卵などの食品摂取の他に、

  • サルモネラ属菌に汚染した排泄物(糞便など)や嘔吐物、汚物等を直接手指で接触し、その手指を介して経口感染する
  • サルモネラ属菌を保菌している動物(ペットを含む、犬や猫、亀、爬虫類など)に触れた手指や口を介して経口感染する

などが挙げられます。

このようにサルモネラ属菌による食中毒や感染性胃腸炎は、口や手指などを介して経口感染し、通常、10〜48時間の潜伏期を経て、下痢や腹痛、嘔吐、発熱(38〜40℃)などを伴う食中毒や胃腸炎を発症しますが、点滴や抗生物質の投与で(大抵の場合)発症後から1週間ぐらいで元通りに快復します。しかし、上記多剤耐性を獲得したサルモネラ属菌(SE菌など)が体の抵抗力が弱い幼児や老人などに感染した場合、症状が進行して敗血症や髄膜炎、急性脳症などを併発して死亡することもあります。小児や幼児、お年寄りなどに腹痛や発熱、嘔吐、大量の下痢などの症状が生じて、食中毒や感染性胃腸炎の感染、発症が疑われる時は、出来るだけ早く医師の診察を乞い、必要な治療を受けたほうが無難です。その際、飼育ペットによる感染が判明(あるいは疑われたり)した時は、直ちに地元の保健所にも連絡して下さい。医師や獣医師、保健所担当者の指示に従って、感染者やペットの対応および感染症の拡散防止対策などを行って、周辺住民の方々に迷惑をかけないようにする必要があります。

また、

  • 食事(おやつを含む)前やペットと接触した後は、手洗いやうがい(洗口)を行う、ペットとの餌の口移しは避ける
  • ペットの健康や排泄物(糞)の状態に気を配り、必要に応じて消毒を行い、その飼育環境を清潔(衛生的)に保つ
  • 感染の媒体となるネズミや害虫(ハエやゴキブリなど)をまめに駆除する
  • 長期保存で古くなった卵や食肉の生食は避け、十分に加熱調理して食べる

などして、食中毒や感染性胃腸炎にかからないよう注意することも大切です。このような衛生対策が、いつでも出来るよう、家庭に市販の消毒薬(除菌剤を含む)やうがい薬、洗口液、殺虫剤、殺鼠剤、衛生用品(除菌ガーゼなど)を常備し、正しく使用できるようにしておくと一安心です。

家庭で日常的に発生する食中毒や感染性胃腸炎は、健康で元気な人の場合、感染しても症状が重くならず、自然治癒する場合が多く、必要以上に恐がることもないと思います。しかし、気温の激変や睡眠不足などで体調を崩した人や、体の抵抗力(免疫力)が弱いお年寄りや幼児などは要注意です。普段から栄養バランスがとれた食事(栄養補助食品などサプリメントの補給を含む)や十分な睡眠、休養をとって、健康(免疫力)の維持・増進を図って、上記食中毒や感染症にかからないよう十分に気をつけて下さい。