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第17回:『齢者に多い“誤嚥性肺炎”の発生とその予防について』

暑い夏が過ぎ、涼しい秋に入りましたが、夏バテや食欲不振などで元気がなく、体調を崩した高齢者をよく見かけます。高齢者は65歳を越えると、加齢による体力や免疫力の衰え(低下)があって、いろいろな感染症(かぜやインフルエンザ、肺炎、胃腸炎、尿路感染症など)にかかりやすくなっています。その中で見逃してはならない感染症として、誤嚥性肺炎があります。

高齢者は食べ物や唾液を飲み込む力(嚥下力、嚥下反射と言っています)が低下して、誤って食べ物や唾液を気管に飲み込む、いわゆる「誤嚥」が生じやすくなっています。誤嚥すると咳が出て、その咳で(また)誤嚥して、食べ物や唾液と一緒に口内細菌が気管に入って、肺炎を引き起こします。

ここ数年、特別養護老人ホームなどの福祉(介護)施設などで、介護を受ける高齢者に誤嚥性肺炎の発生が(季節を問わず)認められており、認知症の高齢者を世話(介護)する人達にとって、要注意の(気が抜けない)病気の一つになっています。

このように誤嚥性肺炎は、主として口の中の細菌が食べ物や唾液と一緒に、(食道でなく)肺や気管支に入って起こる病気です。誤嚥性肺炎を引き起こす細菌は、主として偏性(あるいは通性)の嫌気性細菌類です。ごく普通の健康な人の口腔内に常在している雑菌(バイ菌)で、これらの雑菌が肺に入って、肺炎を発症しています。

誤嚥性肺炎は、加齢で嚥下力が弱くなった高齢者だけでなく、脳梗塞など脳血管障害の病気の後遺症やせき反射、認知症など脳機能障害、意識低下などの障害があったり、胃切除を行ったりして、食べ物や唾液を飲み込む力が弱くなっている人なども罹患することがあります。

その症状は、他の呼吸器感染症(かぜやインフルエンザ、非誤嚥性の肺炎など)とよく似て発熱や咳、痰、胸痛、呼吸困難、食欲不振などがみられ、誤嚥性肺炎と診断することが難しいケースもあるようです。微熱が続き、呼吸や脈拍の数が増え、咳や痰(たん)などが食後に出て、脱水状態が認められる時は、誤嚥性肺炎の疑いがあります。

上記症状が認められた時は、医師の診察を受けて、単なるかぜやインフルエンザなのか、肺炎でも誤嚥性肺炎であるか否かを診断、確認してもらって、早く適切な治療を受けたほうが無難です。発症の初期段階で、医師による受診や治療が遅れると、肺炎の症状が進行して重症化し、死亡する場合もあり、注意する必要があります。

誤嚥性肺炎は、抗生物質の投与を中心とした薬物療法で治しますが、飲み込む力が(元の通りに)回復しない場合があり、飲み込む力をよくするために、医療(介護)の専門家から食事のとり方や喉や舌の動かし方などについて、指導やリハビリ訓練を受ける場合もあります。また、ひどい嚥下障害が続いて、食欲不振になり、医師による特別な処置(専用の管を腹部から胃に差し込んで胃瘻(いろう)を作り、栄養剤や流動食を注入する)を行うこともあり、簡単に治る病気と侮ることは禁物です。

それだけに、このような誤嚥性肺炎にかからないよう、高齢者がいる一般家庭や福祉(介護)施設などで、その発生防止に気をつけて口内衛生を心がけ、口腔ケアをしていく必要があります。その発生を予防する基本的に重要な遵守事項として、

  • うがい(洗口)や食事後の歯磨きを励行して、口腔内を清潔に保つ
  • 歯科医師による定期的な検診を受けるとともに、口内の歯垢、歯石、舌苔を除去してもらう
  • 手指に付着した細菌が口に入らないよう、食事や間食(おやつなど)の前に手洗いを行う
  • 入れ歯は、洗浄液(水道水など)でまめに洗浄して清潔に保つ
  • 前記1)、4)で(必要に応じて)手指消毒薬や洗口液等を用いて消毒、除菌すること

などが挙げられます。うがい薬や消毒薬、洗口(洗浄)液などの市販品を使用する時は、医師や薬剤師など専門家の指示、指導に従って、その選択を誤らず、正しく使用することが不可欠です。

また、このような誤嚥性肺炎に高齢者がかからないよう、普段から日常の生活や健康状態にも十分に気を配ることが大切です。体の抵抗力(免疫力)の維持、増強に必要なたんぱく質やビタミン、ミネラル類が十分に摂取できる、栄養のバランスがとれた食生活と十分な睡眠や休養をとって、健康保持や体力維持を図ることも重要です。誤嚥性肺炎を引き起こす口腔内細菌だけでなく、上記かぜやインフルエンザ、胃腸炎、尿路感染症などの感染症や食中毒を引き起こす細菌やウィルスにも負けない体力(免疫力)を持たせて、高齢者(とくに70歳以上の老年者)を感染から守ってあげて下さい。