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第12回:『動物(とくにペット)から移る感染症とその予防法(その2)』

前回のコラムで動物由来感染症(人畜共通感染症)を取り上げ、一般家庭で飼うペットから感染するネコ引っ掻き病やパスツレラ症、オウム病について、その症状と対策、予防法などを簡単に記述しました。これらの感染症に加え、ペットを飼う一般家庭では皮膚糸状菌症やトキソプラズマ症、イヌ・ネコ回虫症、サルモネラ症の発生が認められています。

皮膚糸状菌症は、人やペット(猫や犬など)に寄生する皮膚糸状菌(かびの仲間で、小胞子菌や白癬菌など)によって引き起こされる病気(皮膚真菌症)です。猫や犬などのペットに、小胞子菌の一種であるミクロスポルム・カニスが寄生していると、その動物と接触(スキンシップ)することで(人に)感染し、発症することがあります。人の腕や顎、頬など皮膚表面に直径1cm程度の円形の赤い発疹や貨幣状の白癬が生じ、かゆみを伴うことが多い。このような症状が生じた時、犬や猫の体表面にも脱毛部分が見つかる場合が多く、同じ病気に罹患していることに気づきます。その症状は比較的緩和で、重症になることは殆どありませんが、いったん、この病気に罹患すると治るのに数週間かかり、全治に長時間要する厄介な病気です。従って、普段からペットの健康に留意し、ちょっとした小さな円形の脱毛を発見したら、皮膚糸状菌症の発生を疑い、自分に感染する前に、ペットを病院に連れて行って診断、治療を受けたほうが無難です。

次にトキソプラズマ症は、猫に寄生するトキソプラズマ原虫によって発症する病気です。猫の排泄物(原虫を含む糞)が乾燥後、埃に混じって浮遊し、これを(人が)吸い込んで感染します。発症までの潜伏期間は不定で、発症しても特に目立つ自覚症状はなく、稀にリンパ節炎やインフルエンザに似た症状が出る程度です。免疫力がある普通の健康な人は、感染しても(殆ど)心配の必要がありませんが、妊娠中の女性は注意が必要です。妊娠の数ヶ月前から妊娠している間に、妊婦が、この感染症にかかると、胎児が先天性トキソプラズマ症を発症し、流産したり、生後に発育不全や精神発達遅滞などを起こすおそれがあります。妊娠中の女性は、猫との同居(接触)を避けたほうが安全です。

また、イヌ・ネコ回虫症は、犬や猫に寄生している回虫によって発症する病気です。犬や猫の糞に含まれる卵が砂場などに混入し、人(幼児や子どもなど)の手や口から経口感染し、小腸で孵化し、8〜12週で幼虫から成虫に成長します。その潜伏期間は不定で、殆どは発熱など風邪や肺炎に似た症状あるいは腹痛、嘔吐、食欲異常を呈する程度で治りますが、稀に肝脾腫脹や肝機能障害などを起こすケースもあります。さらに幼虫が目に移行すると、視力低下や飛蚊症、網膜芽細胞腫、網膜炎などを発症し、失明の危険もあります。また、この回虫症はアライグマなどの小型哺乳類からも感染します。アライグマ回虫症のほうが症状も重く、より危険です。最近、ペットブームで、国内で捨てられたり逃亡したアライグマが野生化して広範囲に生息するようになっているだけに注意する必要があります。この防止対策としては、動物と接触した後や、公園の砂場で遊んだ後は、必ず大量の流水で手や足などを洗う。また、犬や猫などが徘徊する畑や菜園の野菜等は糞で汚染されているおそれがあり、野菜など収穫物をよく水洗いして利用する必要があります。

そして、最後にサルモネラ症ですが、細菌の仲間であるサルモネラ属菌(サルモネラ・エンテリティディスなど)によって発症します。サルモネラ症は、殆どの場合、サルモネラ属菌が汚染した食品(鶏など鳥の卵や動物の肉、魚介類など)の摂取が原因となって発生していますが、サルモネラ属菌を保菌しているペット(犬や猫、亀、爬虫類など)に、小児や幼児が直接触れるなどして、感染、発症するケースも出ています。サルモネラ属菌を保菌する動物(ペットを含む)に触れたり、これらの動物の糞で汚染された食品を摂取するなどして、口や手から経口感染します。10〜48時間の潜伏期を経て、下痢や腹痛、嘔吐、微熱などを伴う食中毒や胃腸炎を発症します。他に病気を持っていない人は、大抵の場合、発症後から1週間ぐらいで元通りに快復しますが、大量の下痢が生じた時は、医師の診察を乞い、輸液を行うなど必要な治療を受けたほうが無難です。ペットからサルモネラ症に感染しないよう、ペット店から犬や猫、ミドリカメ、ヘビなどを購入する時や、その飼育期間中は、その健康状態や取り扱い(接触方法など)に十分注意する必要があります。下痢や軟便をしているペットには近づかず、接触しない。やむを得ず、ペットに触れた時は、必ず手洗いやうがいをする。ペットが接触した食品類や生活用品(食器、座布団、カーペットなど)、屋内の床・廊下面や畳面などは、水洗いや清掃(清拭)で清潔にして、必要に応じて加熱殺菌、消毒、除菌する。ペットを飼育している室内や、ペットの飼育舎、飼育籠等も掃除、洗浄、換気などして不衛生、不潔なまま放置しないことが求められます。

以上、前回と今回のコラムで、一般家庭で飼育するペットから人(家族)に感染する主な病気(7種類)を取り上げ、その症状(特徴)や予防法などを簡単に記しました。これらの7疾患を含めた動物由来感染症の感染予防で共通する主な基本的衛生対策として、

  • 飼育者の手洗いとうがいの励行
  • ペットとの不用かつ安易な接触(餌の口移しなど)をしない
  • 家の中の清掃と換気をまめに行う
  • ペットの健康状態に気を配り、その飼育環境を清潔(衛生的)に保つ
  • 感染の媒体(ベクター)となる害虫(ノミ、しらみ、蚊、ハエ、ダニ、ゴキブリなど)をまめに駆除する

などが挙げられます。このような衛生管理(感染予防対策)が出来るよう、家庭に市販の消毒薬や洗口液、殺虫剤、洗浄除菌剤などを常備して、いつでも正しく使用できるようにしておくと一安心です。

また、ペットやその飼育者等に感染症の発生など異常が認められた時は、直ちに地元の地方自治体(保健所)に連絡、相談するとともに、医師や獣医師の診察と治療を受けたほうが無難です。医師や獣医師、行政等専門家の指示に従って、感染者やペットへの対応〔治療や糞尿等排泄物の処理(消毒や焼却、廃棄など)、感染症の拡散防止対策など〕を行い、隣近所や周辺住民の方々に迷惑をかけないよう十分配慮する必要があります。

前回のコラムでも記しましたが、ペットから移る感染症は、健康な人の場合、その殆どが、感染しても、軽い症状で、自然治癒しています。ペットから移る感染症に必要以上に恐がることもないと思います。しかし、体の抵抗力が小さいお年寄りや幼児などは、感染症にかかりやすく、注意が必要です。体の抵抗力(免疫力)を低下させないよう、常日頃から自分や家族、ペット等の健康状態に注意し、正しい食生活(必要に応じて栄養補助食品:サプリメントの摂取を含む)や十分な睡眠を取って、規則正しい日常生活や適度の運動などを行って、健康の維持・増進を図って、動物由来感染症だけでなく、新型インフルエンザや他の感染症、食中毒に罹患しないよう十分に気をつけましょう。