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第11回:『動物(とくにペット)から移る感染症とその予防法(その1)』

近年、高齢・少子化社会が進む中で、一般家庭でペット(愛玩動物)を飼う人達(とくに高齢者)が増えています。家族の一員として、市井や公園などで犬と一緒に楽しく散歩する人達や、猫が家の中で飼い主と戯れたり、家の周辺を勝手気ままに徘徊しているのをよく見かけます。

自分が飼育するペットは、その健康状態や飼育場所の衛生状態が比較的容易に知ることが出来、時々ペットの体を入浴等で洗ったり、清拭などして清潔に保つことが可能です。しかし、ペット以外の外部から侵入してくる犬や猫などは、どこで、どのように暮らしているのか殆ど分からず、その健康状態や衛生状態を把握することが非常に困難です。

このように人と動物(ペット)の接触する機会が増える一方で、最近、動物から人に移る感染症が問題になっています。この病気は、人から動物にも移ることから、人畜共通感染症と称していますが、わが国(厚生労働省)では、動物由来感染症と言っています。

世界保健機関(WHO)が認める人畜共通感染症は約200種類あり、そのうちペットから移る感染症は約50種類で、国内でも発生しています。そして、その30種類近くが、一般家庭など身近なところにいる犬や猫、小鳥などの小動物から人に感染しています。国内では、狂犬病の発生は認められていませんが、ネコ引っ掻き病やパスツレラ症、トキソプラズマ症、イヌ・ネコ回虫症、オウム病、サルモネラ症、皮膚糸状菌症の発生事例が報告されています。これらの感染症の中には、医師による診断や治療が遅れると命にかかわる感染症もあります。それだけに、ペットと安心して暮らすため、前記7種類の感染症について正確な知識を持ち、罹患しないよう十分気をつける必要があります。

このコラムでは、上記感染症のうち比較的よく発生しているネコ引っ掻き病とオウム病について、その予防法を含め、要点だけ記述します。

ネコ引っ掻き病は、猫(稀に犬)の口の粘膜や爪に存在するバルトネラ・ヘンセラという細菌に感染して発症する病気です。猫に咬まれたり、引っ掻かれたりして、数日から14日ぐらい経って傷口が赤紫色に腫れたり、水ぶくれや痛み、微熱、倦怠感などが生じます。これらの症状は、その後、いったん治まりますが、数日から数週間経って、再び発熱や頭痛などインフルエンザに似た症状が現れ、大抵の場合、この程度の症状が1カ月から2カ月ぐらい続いて自然治癒します。しかし、診断や治療が遅れると、傷口が膿んだり、傷口に近いリンパ節が腫れ、肝腫大や髄膜炎、肺炎などを併発し、重症になることがあります。

このネコ引っ掻き病は、猫や犬に寄生するノミを介してバルトネラ・ヘンセラ菌に感染し、発症することもあります。猫や犬に咬まれたり、引っ掻かれたり、ノミの寄生が見つかったりして、上記症状の兆候が認められた時は、直ちに医師の診察を乞い、適切な治療を受けて治す必要があります。

また、猫や犬と一緒にいる時は、ネコ引っ掻き病に罹患しないよう、

  • 咬まれたり、引っ掻かれたりした時は、傷口部をよく洗う。
  • 長時間ずっと体に触れたり、撫でたりした時は、手をよく洗う。
  • 猫や犬にノミが寄生しないよう定期的に調べて、ノミが見つかった時は直ちに駆除する。
  • 猫や犬の爪を短く切る。
  • 動物との餌の口移しやキッスなどの接触行為は慎しむ、ついうっかりして接触した時は、直ぐうがいをする。

などの対策が必要です。とくに1)と5)の取り組みで、殺菌剤が配合された市販の消毒薬や洗口液を常備し、使用すると一安心です。

次にオウム病ですが、この病気はクラミジアの一種(クラミジア・シッタチー、以下「オウム病クラミジア」と記す。)に感染して発症します。この病気は主に鳥類(オウムやカナリア、ジュウシマツ、セキセイインコ、文鳥、九官鳥など)から人に感染します。稀に犬や猫からも感染することがあります。ペットとなる鳥類は、このオウム病クラミジアをだいたい持っており、鳥が元気でいる間は、人への感染はなく、大丈夫と言われています。人への感染は、鳥が鼻水を出したり、毛が逆立つなど元気を失い、弱くなり、下痢をして死亡した時が要注意です。オウム病クラミジアが糞尿と一緒に鳥から排出され、乾燥し、塵埃となって飛散、浮遊し、人が吸い込んでしまいます。また、鳥に咬まれたり、餌の口移しなどで、オウム病クラミジアが人の体内に入って感染、発症することもあります。

オウム病は、1週間から2週間の潜伏期を経て、発熱や悪寒、頭痛、咽頭痛、筋肉痛、倦怠感、肺炎などインフルエンザに似た症状を呈します。治療が遅れると、呼吸困難や意識障害、ショック症状などを呈し、死亡することもあります。オウム病は、先に記したネコ引っ掻き病に比べ、元気な人でも罹患することがあり、比較的死亡例も多い、恐い病気です。しかし、特効薬(抗菌剤)があり、医師にインフルエンザと誤診されない限り、治療で生命は助かります。

オウム病にかからないよう、

  • 餌の口移しやキッス等は行わない、うっかりして前記行為をした時は、事後にうがいをして口の中を清潔に保つ。
  • 飼っている小鳥が、元気が無くなって弱った時は、人がいる場所から離して隔離する。
  • 小鳥や人にオウム病の発生(兆候)が認められる時は、直ちに保健所に告げ、相談して指示を仰ぐとともに、医師や獣医師の診察と治療を受ける。
  • 医師や獣医師、行政等専門家の指示に従って、死んだ鳥や糞尿、羽毛等の処理(消毒や焼却、廃棄など)

を行うなどの対策が必要です。

上記ペットから移る感染症は、健康な人の場合、その殆どが、感染しても、それに気付かず、軽い症状で、自然治癒しています。しかし、体の抵抗力(免疫力)が小さい通院・入院患者やお年寄り、幼児などは、上記感染症にかかりやすくなっています。したがって免疫力を低下させないよう、常日頃から自分の健康に注意し、健康の維持・増進に努める必要があります。免疫力の低下を防ぐことは、感染症の予防で重要かつ基本となる対策の一つになっています。

次回の専門コラムでは、パスツレラ症やトキソプラズマ症、イヌ・ネコ回虫症、サルモネラ症、皮膚糸状菌症について記します。