HOME > 感染予防教室 > Dr.ヨコヤマの専門家コラム > 第2回:『クラミジアによる性感染症について』

感染予防教室

●Dr.ヨコヤマの専門家コラム


■バックナンバー

第2回:『クラミジアによる性感染症について』
■ここ10数年、増加傾向

「性感染症」がここ10数年続いて増加傾向にあります。

「性感染症(STD:sexually transmitted diseases)」とは、以前は「性病」と呼ばれ、梅毒や淋病などがその代表でしたが、1999年施行の感染症予防新法により、もう少し広い意味でこの「性感染症」という名称になりました。おもな性感染症には、クラミジア感染症や尖形(せんけい)コンジローム、淋病、性器ヘルペス、毛ジラミ、疥癬(かいせん)、HIV感染症(エイズ)などが知られています。この中で、とくにクラミジア感染症が年々増え続け、現在、全国に約100万人の外来患者がいると推定され、社会問題のひとつにまでなっています。

■クラミジア感染症とは

クラミジアは0.2〜1.5ミクロンの大きさの球菌状の微生物で、人や動物、ほ乳類などに病原性を発揮するものがいます。なかでも、クラミジア・トラコーマティスとクラミジア・プシタという2種類の病原体がよく知られ、前者は人に感染してクラミジア感染症を発症させ、後者は鳥類から人にオウム病を感染させる非常にやっかいな病原体です。

クラミジアによる性感染症は、性行為時の粘膜の接触により感染しますが、感染した病原体の量によって通常数日間〜1カ月ぐらいの潜伏期間を経て発症します。ここで問題になるのは、発症するまではほとんど自覚症状がないため、男女ともに感染したことに気づかず、知らない間に感染を拡げてしまうことが多いことです。

■クラミジア感染症の症状

  • 男性…尿道炎は1〜3週間で発症。漿液性・粘液性分泌物、精巣上体炎
  • 女性…1〜2週間で子宮頚管炎。子宮付属器炎、骨盤内感染症、肝周囲炎、不妊症、 喉頭感染
■女性にリスクが高い

女性はその体の構造上、性器粘膜の面積が男性に比べて広いため、もともと感染のリスクが高いといえます。さらに女性はほとんど自覚症状がないため、感染に気づかない場合が多く、子宮の頸管部に起きた炎症(子宮頸管炎)が、子宮内膜〜卵管〜腹腔内へと広がり重症化するおそれがあり、卵管がつまる「卵管性不妊症」につながることがあります。さらに妊娠中の感染では早産や流産の原因となったり、出産の際に新生児の70%がクラミジアに感染し、結膜炎、鼻腔咽頭炎、中耳炎、肺炎などを起こすといわれています。

一方男性は、女性に比べその症状が出やすく、非淋菌性尿道炎などのはっきりした症状が現れます。しかし、そのまま我慢したり放置したりすると、次第に自覚症状が消えてしまうことがあるため、治療を受けなかったり通院を勝手に中断してしまう人が多いようです。その結果、病原体が体内の奥に入り込み、前立腺に膿を持ったり、睾丸に感染して不妊症の原因になったりと感染症が進むことがあります。

■他人事ではありません〜不安があったらためらわず、早めに受診!

性感染症はその性質から、感染経路を完全に絶つというわけにはいきません。となると、各個人の対応が感染の広がりに大きく影響します。

もしも異常な兆候(例えば、膀胱炎を繰り返す、排尿時に痛みを感じる、尿道から膿が出る、おりものの色・量・においがふだんと違うなど)に気づいたときは、できるだけ早く専門医に検査、診断してもらい、適切な治療を受けるべきです。最近では、自宅でチェックできる「郵送検診キット」などもあります。感染が初期の場合なら、抗生物質の適切な服薬で通常2週間ほどで治療が可能です。ただし自覚症状が消えても、投薬の中止は専門医の判断に任せて、自分で勝手に中止することは避けましょう。

[PR] だれにも気づかれずに、自宅でチェックできる「郵送検診キット」

■2人一緒が原則です

性感染症は、性行為を介して移る病気ですから、自分が感染していたら必ずパートナーにも感染していると考えるべきです。ですから治療の際には、パートナーも一緒になって治療療を受ける必要があります。それには抵抗があるかもしれませんが、仮に、一方だけが治療したとしても、相手が治療していなければ再び感染してしまう【ピンポン感染】が繰り返されます。相手に分からないようにと内緒で治療をしたとしても、この【ピンポン感染】のために堂々めぐりにおちいってしまいます。

■お互いの体を病気から守る

現在、性感染症は戦後第2期の流行期を迎えているといわれています。この流行の背景には、若年者を中心とした性への意識、価値観の変化や、「自分だけは感染しない」という意識があると専門家の間で指摘されています。避妊への関心のレベルは高まったものの、性感染症に対する知識や認識は低いままなのかもしれません。どこか他人事というか、特別な人がかかるものと思いこんでいる人が多いとも考えられます。

性感染症は、性行為を行う以上かかる可能性のある身近な病気です。その予防策として必要なのは、

  • 性感染症に関する正確な知識や情報を身につける
  • 健康で清潔なからだをつくる
  • 性行為時のコンドームの使用
  • 自分の体と相手の体を知る(早期発見にもつながります)
  • 不安があれば早めに受診する(今は市販の検査キットもあります)

などです。これらはパートナー間の、信頼感のある関係づくりにもつながるのではないでしょうか。