第82回:『入浴(入湯)する時は、レジオネラ症の感染に注意! 死者も発生、その感染予防対策について』
ノロウイルスによる感染性胃腸炎(食中毒を含む)やインフルエンザが流行し、国内各地の飲食提供施設や学校、保育施設、介護施設等で集団感染が発生しています。自施設でインフルエンザや感染性胃腸炎の集団感染が起きないよう、十分に注意して下さい。
また、寒い時期は冷えた身体を温めるため、入浴する機会が増えます。温泉施設や宿泊施設、保健福祉施設、レジャー施設などの入浴(入湯)施設等で、浴槽水等に汚染するレジオネラ属菌に感染し、レジオネラ症を発症する人(高齢者が多い)が出ています。
水温が35℃前後の浴槽水は、水中の残留塩素が消失しやすく、汚染したレジオネラ属菌にとって、増殖しやすい環境になっています。入浴(入湯)中に、菌を含む水飛沫(エアロゾル)を、口や鼻から吸い込んで、レジオネラ症に感染する恐れがあります。
レジオネラ症は、その症状から肺炎型(いわゆる"レジオネラ肺炎")と、肺炎にならない自然治癒型(いわゆる"ポンティアック熱")の二つに大別されます。
レジオネラ症の発症患者は、(国への報告数をみる限り)ここ数年、年間700人を超え、その殆どがレジオネラ肺炎です。医師による診断と治療が遅れてレジオネラ肺炎で重症化したり、死亡する人(高齢者)が増えています。
体の抵抗力(免疫力)が低くなっている高齢者や病人などは、風邪やインフルエンザだけでなく、レジオネラ症などの細菌性肺炎にも罹患しやすくなっています。
今季(2011年)も、11月末に、レジオネラ症の発症患者が(既に)700人を超え、死者も(昨季より)多く出ています。筆者が知る範囲でも、菌の検出例を含め、下表に示す感染(死亡)例が新聞等に報道されています。
| 報道月 | 感染(あるいは汚染)の内容 |
| 1月 | ・埼玉県の高齢者レクリエーション施設や、福岡県の総合保健福祉センターで、浴槽水から基準を上回る菌が検出される。 |
| 2月 | ・北海道の老人福祉センターや、熊本県の温泉センターで、浴槽水から基準を上回る菌が検出される。 |
| 4月 | ・東日本大震災で、レジオネラ症の発生(4例;4/13現在)が報告される。 |
| 5月 | ・新潟県の老人用入浴施設や、千葉県の健康支援施設(温泉)で、基準を上回る菌が検出される。 ・岩手県の宿泊施設で、男性(62歳)がレジオネラ症を発症し、入院先の病院で死亡する。宿泊施設から菌が検出。 |
| 6月 | ・岩手県の入浴施設で、浴槽水から菌が検出される。5月に施設を利用した男性1人がレジオネラ症を発症。 ・宮崎県のホテル(大浴場)で、浴槽水から基準を上回る菌が検出される。 |
| 7月 | ・沖縄県の特別養護老人ホームで、80代の男性がレジオネラ症で入院、死亡する。特養施設内の浴槽から感染。 ・鹿児島県の温泉施設で、基準を上回る菌が検出される。利用した60代男性が、レジオネラ症で一時重症化、入院。 ・愛知県の温泉施設で、基準を上回る菌が検出される。施設に老人ホームが併設。 ・全国28都道府県の温泉地にある足湯のうち、125カ所を2009年から今年まで調査し、その25%にあたる31カ所から菌が検出される。 |
| 9月 | ・神奈川県のスポーツ施設で、浴槽水から基準を上回る菌が検出される。利用者8人がレジオネラ症を発症し、6人が重い症状になって入院。 ・岩手県盛岡市に住む70代の男性がレジオネラ症による肺炎で死亡する。県内でレジオネラ症による死者は2011年に入り4人目。 |
| 11月 | ・秋田県の温泉付き集会所や老人福祉センターで、入浴場の浴槽水から基準を上回る菌が検出される。 ・群馬県の温泉旅館で、浴場から基準を上回る菌が検出される。大阪府の60代の男性がレジオネラ症で死亡。 |
| 12月 | ・長崎県の温泉施設で、入浴した男性(74歳)がレジオネラ症で入院する。 ・神奈川県の地域センターで、浴槽水から基準を上回る菌が検出される。 |
上記呼吸器感染症や感染性胃腸炎に罹患しないよう、感染の発生(流行)時は、予防接種を受けたり、手洗いやうがい(洗口)、マスク着用、咳エチケットなどの衛生対策(衛生慣行)を励行するだけでなく、施設の水管理など環境衛生管理も徹底する必要があります。
レジオネラ症は、菌を含む水滴(エアロゾル)を空気と一緒に(口や鼻から)吸い込むことによって感染し、感染(発症)者から周辺の人に感染が広がることがないとされています。
上表に例示したレジオネラ感染の発生(拡大)を防ぐため、一般家庭や介護施設、温泉施設、宿泊施設等にある給水・給湯設備や浴場・温水プール(ろ過器、シャワー設備を含む)、足湯設備、加湿機能が付いた空調機器や空気清浄機、加湿器等の管理(衛生保持)に十分に気をつける必要があります。
レジオネラ属菌による汚染は、上記衛生管理が不十分(不適切)になって生じています。菌を含む水飛沫(エアロゾル)を吸い込まないようにするため、1)浴槽の残り湯を溜めっぱなしにせず清掃(洗浄)と乾燥を心がける、2)保温循環式浴槽(いわゆる「24時間風呂」)を使用している場合は装置の保守管理(清掃、洗浄、消毒など)を徹底する、3)超音波式などの非加熱型加湿器を使用する際は水を毎日交換する、4)レジオネラ属菌による汚染が生じていないか浴槽水など使用水を定期的に検査すること などが求められます。
その際、人の健康管理(健康チェック)もまめに実施して下さい。十分な休養(睡眠)や栄養のバランスがとれた食事、適度な運動をするなどして、体力を低下しないように気をつけることは言うまでもありません。
介護施設等でレジオネラ属菌による汚染、感染が発生しないよう、厚労省告示第264号「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」(平成15年7月25日)や、筆者のコラム(第3回)などを参考にしながら、上記感染予防対策を自主的に推進、徹底して下さい。
(2012.1.13)