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感染予防教室

●Dr.ヨコヤマの専門家コラム

Dr.ヨコヤマのプロフィール
横山 浩
  • 1970年 大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了
  • 薬学博士、薬剤師
  • ■職歴
  • 大阪府立公衆衛生研究所(薬事指導部、現食品医療品部)
  • (社)大阪府薬剤師会試験検査センター
  • サラヤ株式会社(現在)
  • ■学会・研究会活動
  • 日本薬学会
  • 日本環境感染学会
  • 日本防菌防黴学会(環境殺菌工学研究部会)
  • 環境管理技術研究会
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第51回:『新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の国内感染とその予防対策について』

インフルエンザウイルス前回のコラム(第50回)に記したように、新型の豚インフルエンザ(以下「新型インフルエンザ」と表記する。)が国内で人から人に感染しています。5月16日に神戸市で国内初の感染が確認されて以来、兵庫県や大阪府を中心に10府県で364人の感染者が報告されています(5/28現在)。

新型インフルエンザは、5月末になって、新たに確認される感染者の数が減少し、終息に向かっている感があります。4月下旬から1カ月余り、新型インフルエンザに関する報道が連日、新聞やテレビ等で大きく取り上げられました。私達は、新型インフルエンザの感染拡大で、正確な情報の入手と冷静な対応を心がけましたが、マスコミの一部過剰な報道に(多かれ少なかれ)不安を煽られ、振り回された感が無きにしもありません。

高齢者が多く利用する福祉介護施設も、一時は、新型インフルエンザの感染が施設まで拡大し、多くの感染者が出て、死者も出るのではないかと大変心配されたと思います。

国(厚労省)も、新型インフルエンザに対する福祉介護施設の対応について、既に「高齢者介護施設における新型インフル対策等の手引きの送付について」(平成18年3月20日付)を出して、手引きに示された対応(対策)の推進と徹底を求めています。そして、今回の新型インフルエンザの感染の対応についても、国内感染の状況を見ながら、その対応策を相次いで事務連絡の形で提示しています。5月16日付で「新型インフルエンザに対する社会福祉施設等の対応について」、5月20日付で「新型インフルエンザに対する社会福祉施設等の対応について(追加)」、5月22日付で「『新型インフルエンザに対する社会福祉施設等の対応について』の一部改定について」を出しています。この事務連絡で、施設に新型インフルエンザの感染が発生(拡大)しないよう、改めて手洗いやマスクの着用などの必要な感染予防対策の実施や、施設内で感染が確認された場合の対応(臨時休業や事業継続、連絡や受診など)について、その対処法を示し、その周知徹底を求めています。

今回の新型インフルエンザウィルス(A/H1N1型)は弱毒性で、その毒性は毎年発生(流行)している季節性インフルエンザ(Aソ連型など)とあまり変わらないようです。国内の感染者も高校生などの若年者が圧倒的に多く、中高年者の感染は(今のところ)全体の1割未満に止まっています。また、その発症(症状)も、季節性インフルエンザと似ており、比較的軽症に止まり、国内で死者も出ていないようです。感染者の殆どが、抗インフルエンザ治療薬(タミフルやリレンザなど)の投与で治癒しています。だからと言って、「弱毒性で重症患者や死者が出ていない、思ったより症状が軽い!」と安心は出来ません。毒性(病原性)に関する情報データや感染者の臨床症例の数が(季節性インフルエンザと比較して)非常に少なく、(現時点で)症状が軽いと簡単に判断出来ず、今回の新型インフルエンザの感染を軽く見ることは非常に危険です。

季節性インフルエンザでも、毎年、多くの高齢者が、細菌性肺炎を併発して死亡しています。今回の新型インフルエンザウィルスも、変異して強毒性に変化し、この秋以降、再び登場し、若年者だけでなく高年者まで流行するおそれがあります。それだけに、高齢者が利用する入所(通所)施設でも、新型インフルエンザの感染の再発(拡大)に十分注意する必要があります。

この新型インフルエンザの感染が、いつまで続くかは、簡単に予測は出来ませんが、この感染発生の状況が、国内外で(ここ数カ月間)続くと思われます。そして、上記したように、毒性が強くなったウィルス(抗インフルエンザ治療薬に耐性を獲得しているかも知れない)に変貌し、今年の秋以降、(第二波、それも季節性インフルエンザと同時発生して)大流行するおそれが十分に考えられます。この新型インフルエンザに対する免疫を持たず、ワクチンも用意されていない状況で、自施設で感染者が出ないよう、必要な感染予防対策を自主的かつ積極的に実施して、その再発(流行)に備えることが望まれます。自施設の衛生管理や感染予防対策の実施内容を、今一度、点検や見直しを行って、不備な点があれば、改善して下さい。

施設で新型インフルエンザの感染が発生(拡大)しないよう、その予防対策として、

  1. 感染の発生(流行)時は、健康チェックを厳しく行い、感染しない(あるいは感染させない)対策としてマスクの着用を義務づける。感染者は(気づいた時点で、出来るだけ早く)隔離して、発熱相談センターへの連絡や医師の受診・治療を受ける。感染者と接触した後は手指消毒を行う。人と会話したり、人が集まる場所では「咳エチケット」を守る。
  2. 歯磨きなど口腔ケアや、誤嚥防止ケアをきちんと行って、細菌性肺炎などの併発を防ぐ。
  3. 手洗い(手指消毒を含む)やうがい(洗口)、物品・器物・衣類・汚物等の消毒は、正しい方法を習得して、感染の発生(流行)時だけでなく、日常的に実施(励行)する。汚物(排泄物や吐物など)に触った後は手指消毒を行う。
  4. 部屋の中は清掃や清拭、換気を定期的に行って、清潔かつ快適な状態に保つ。室内のエアコンは控えめにして、冷え過ぎず、適切な湿度を保つなどの対策が不可欠です。

手洗い・うがい・マスクの着用

そして、日頃から新型インフルエンザの発生や予防対策(消毒や除菌の方法など微生物制御技術)に関する最新情報を入手しておくことも大切です。その情報を職員(関係者を含む)が(研修の場などで)共有、活用しながら、職員が高い衛生意識と緊張感を持って、上記感染予防対策などが定められた(自施設で作成した)感染予防対策マニュアルを順守していくことが望まれます。日常の健康管理や衛生管理、衛生慣行、環境衛生管理を実施(点検を含む)、徹底して、施設に入所(通所)している高齢者を新型インフルエンザから守ってあげて下さい。

(2009.6.10)


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