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感染予防教室

●Dr.ヨコヤマの専門家コラム

Dr.ヨコヤマのプロフィール
横山 浩
  • 1970年 大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了
  • 薬学博士、薬剤師
  • ■職歴
  • 大阪府立公衆衛生研究所(薬事指導部、現食品医療品部)
  • (社)大阪府薬剤師会試験検査センター
  • サラヤ株式会社(現在)
  • ■学会・研究会活動
  • 日本薬学会
  • 日本環境感染学会
  • 日本防菌防黴学会(環境殺菌工学研究部会)
  • 環境管理技術研究会
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第65回:『食中毒や感染性胃腸炎が多発、昨季に比べ急増、手洗いの励行や消毒(除菌)の徹底を!』

お腹が痛い今季は、6月頃から食中毒や感染症が、昨季に比べ、一般家庭や飲食店、保育施設等で多発しています。とくに腸管出血性大腸菌やカンピロバクター、ウェルシュ菌などの細菌による食中毒や感染性胃腸炎の発症患者が(7月から)多く出て、昨季より早く、食中毒警報を発令する地方自治体が相次いでいます。

食中毒や感染性胃腸炎は、高齢者入所施設でも発生しています。秋田県や群馬県、長野県の老人介護施設で、腸管出血性大腸菌やウェルシュ菌による集団感染が発生しています。今のところ、死者は出ていませんが、安心は出来ません。

この他、“夏風邪”とも称されるヘルパンギーナや手足口病などのウィルス性疾患が、乳幼児や小学生(低学年)の間で多発し、この時期の発症患者数が過去5年間で最多となっています。

アルコール消毒今季、食中毒や感染症が(昨季より)多発する原因の一つとして、家庭や施設などで取り組まれる衛生管理や衛生慣行の不徹底が指摘されます。

昨季は、この時期に新型インフルエンザの流行があり、どの家庭や施設でも、手洗いやうがいが励行され、アルコール製剤の使用を中心とした消毒が徹底されました。その効果があってか、食中毒や感染症の発生も減少しました(筆者のコラム第56回参照)。

しかし、今季は、3月に新型インフルエンザの流行が終息し、喉元過ぎれば・・・・で、アルコール製剤を用いる家庭や施設が少なくなり、流水あるいは石けんを用いる手洗いも、時間をかけず、手を抜く人が多くなっています。次第に緊張感が薄れ、衛生意識が低下し、手洗いやうがいなどの衛生慣行が励行、徹底されず、なおざりになっているように見受けられます。「今季も、食中毒や感染症は、昨季と同様、発生しないだろう・・・」と、安易に判断し、油断して、手洗いやうがいの回数が減ったり、その方法がいい加減になって、食中毒や感染症の多発(増加)を招いていると筆者は思っています。

これから先、高温多湿な、暑い日々が続き、上記食中毒や感染症が、ノロウィルス感染を含め、今以上に、多く発生する恐れがあります。乳幼児や高齢者の集まる施設では、十分に注意する必要があります。

このような食中毒や感染症にかからないよう、福祉介護施設でも、以下に記す感染予防対策について、自施設の取り組み状況を再点検し、問題点があれば、改善して下さい。

  1. 手洗いやうがいは、まめに(時間をかけて)行う。感染の発生(拡大)時や、菌の感染(汚染)が疑われる時は、アルコール製剤(手指用)やうがい薬(抗菌剤配合)を使用する。
  2. 食品や食材(とくに生肉などの生鮮食料品)は、調理後、室温で長時間放置せず、早く食べて、食べ残しや残り物が出ないようにする。生肉の摂食は出きるだけ控え、古くなった食品(食材)は口にしない。食品(食材)の加熱や洗浄(除菌)は十分に行う。
  3. 調理や食事の際、器具(包丁やまな板、食器、はしなど)の使い分けを行う。使用した食器や調理器具、ふきんなどは、洗浄(除菌)を行って、乾燥させた後、使用する。食中毒菌の汚染が疑われる時は、熱湯や薬液による消毒を行う。
  4. 食品(食材)を保存する冷蔵庫の温度管理や、冷蔵庫内の清掃(消毒)を徹底する。
  5. 発症患者の排泄物(糞便や嘔吐物など)や、排泄物が付着した衣服、シーツ等は、手で直に触らない。排泄物は、速やかに適切な処理(消毒、密封など)を行う。
  6. 飼育する犬や猫、カメなどの管理や、野生化した犬や猫の管理(施設内への侵入防止、排泄物の処理など)を徹底する。
  7. 消毒薬やうがい薬は、使用期限を厳守し、適正な使用を徹底する。
  8. 厚労省や国立感染症研究所(感染症情報センター)から提供される情報(「食中毒事件一覧速報」、「感染症発生動向調査(週報)」など)を入手して、職員の間で共有、活用する。
    手洗い・まな板使い分け・消毒

また、上記8つの取り組みに加え、食中毒や感染症の発生に、少しでも早く気づくよう、普段から、入所者や職員の日常の生活や健康状態にも十分に気を配る必要があります。室内の温度や湿度の管理(換気を含む)をして、快適な環境を保つことは、熱中症対策にもなります。

施設の入所者や職員に、発熱や腹痛、下痢(水のような便)、嘔吐が止まらないなどの症状が認められる時は、隔離して、出来るだけ早く専門医による診察と治療を受けたほうが無難です。

健康管理や衛生管理、衛生慣行、環境衛生に心がけて食中毒や感染症の予防に努め、施設内感染の発生(拡大)を防いで下さい。

(2010.8.26)


「Dr.ヨコヤマコラム第56回」 ここ数年、原因不明の食中毒が増加、その予防対策について