中小企業庁関係の技術アドバイザー制度(中小企業支援事業における専門家派遣制度)は、都道府県の知事等より委嘱を受けた各技術分野の専門家が、中小企業の新技術の導入・新製品開発・ISOやHACCPの承認・認証取得支援などの技術指導やアドバイスを行う制度である。その窓口は、多くの府県においては工業技術センターが担当部門となっている。筆者は、1980年に本制度が発足以来、1府5県の技術アドバイザーに就任し、多くの中小食品企業のサニテーション技術の改善・強化やHACCPの導入支援に当たって来た。
本制度で対象となる食品企業は、衛生品質管理に熱心な先進行動的な中堅中小企業が多いが、その多くはHACCPやISO9000の導入を最終目標としている。
これより業務の主体は、品質保証体制の確立、一般衛生管理事項の改善強化と該当業務のSSOP(衛生標準作業手順書)の作成並びにHACCPの7原則に基づく食品製造の関係書類の作成と現場への導入・定着についての支援である。
しかし最終目標がHACCP等の導入による高品質・安全性の高い食品の製造であるとしても、その原点は食中毒の防止にある。言い換えれば衛生品質管理は、その取り組む目的にしても講じる対策にしても食中毒の防止を第一義の基本理念として対策を講じ、その延長線上により高い目標に向かってHACCPなどの管理システムの導入がある。
食中毒は、細菌やウイルスによる微生物性食中毒、ふぐやキノコの毒に起因する自然毒食中毒、農薬やPCBなど有毒な工業薬品等に起因する化学性食中毒、アレルギー物質に起因するものに大別されるが、発生頻度・患者数よりその主体は微生物による食中毒、中でも細菌性食中毒が主役である。
この微生物性食中毒を主とする防止対策の基本は、わが国の食品衛生法に"施設基準準則"と"管理運営基準準則"が規定されているので再確認願いたい。さらに具体的には1996年の腸管出血性大腸菌O157H7の多発時に策定された"大量調理施設衛生管理マニュアル"の重要管理事項が参考になる。そのポイントを次に示した。
要はハード・ソフトの食品衛生の基本手法、食中毒菌を「付けない」、「増やさない」、「やっつける」に忠実であることである。具体的な対策は前記のマニュアルを参照願うとして、その実践に当たってのポイントは、管理業務の原点である5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底と個人衛生や洗浄・殺菌作業などの関連作業の標準化・書類化(SSOPの作成)とそれに基づく実施と確認・記録の作成である。これらの関連業務が的確に実施できると食中毒の防止はむろんHACCPなどの高度な衛生管理の導入も可能となる。
1980年に食品工業のトータルサニテーションの必要性をわが国で最初に提唱した。その後、1992年にトータルサニテーション・マネージメントシステム論を発表し、今日のHACCPの一般的衛生管理事項(PP)の実践システムとしての理論を構築した。
防菌防黴辞典(日本防菌防黴学会、1996)、食品保存便覧(クリエイティブジャパン、1991)、微生物制御実用辞典(フジテクノシステム、1993)、有害微生物管理技術第1巻(フジテクノシステム、2000)、こうすればHACCPシステムが実践できる第3巻(日本技連出版、2000)ほか共著10冊 研究報文2報、技術報文・総説ほか多数(約150報)
